昼間、嫁ブーを連れて芦屋の病院に行ってきた。 あいにく駐車場が確保できなかったので、終わったら電話をもらうことにして病院の入口で別れ、ぼくは近くの芦屋漁港で待機していた。
今日の北九州の天気は小雨模様で、昼だというのに空は暗かった。 その空き地には車が数台駐まっていたものの、人影はなく、何となく不気味だった。 待っている間、本を読んでいたのだが、その本が不気味さに拍車をかけた。
何の本を読んでいたのかというと、曽我ひとみさんのご主人の書いた『告白』で、その時読んでいた箇所が、ちょうど曽我さんが拉致される場面だったのだ。 「もし、拉致されたらどうしよう?」 そう思ったとたん、ぼくはすべてのドアをロックした。
さて、嫁ブーと別れてから1時間が過ぎた。 だが電話は入らなかった。 きっと検査が難航しているのだろう。 先の本のこともあって、何となく重苦しい。 それまで聞いていたラジオを止め、CDをかけたのだが、落ち着かない。
さらに1時間が経過した。 その時、ぼくは猛烈な尿意に襲われていた。 誰もいないので、そこで立小便をしても別に咎められないだろうが、車を出ると拉致されるかもしれない。 そこで近くのコンビニに移動しようとした。 その時だった。 ようやく嫁ブーから連絡が入ったのだ。 「もうすぐ終わるよ」 病院に入ってから2時間、「これはきっと何かある」と思ったが、電話はそこで切った。 それよりも小便である。 さっそくぼくは、コンビニ経由で病院へ行った。
病院に着いてから20分後に嫁ブーは出てきた。 「どうやったんか、やっぱり入院か?」 「いや、入院はせんでいいよ」 「病名はわかったんか?」 「あのー…」 「えっ?」 「ニキビの大きいのなんち」 「あっ?」 「脂肪がたまって腫れたらしいんよ」 「あのグリグリは脂肪の固まりやったんか?」 「うん」 「で、とってもらったんか?」 「いや、そのうち小さくなるやろうということで、何もせんかった」
グリグリの大きさは直径2センチ、高さも1.5センチほどあったのだ。 よくそこまで脂肪がたまったものである。 きっと嫁ブーの体は毒素で一杯なのだろう。 心配して損した。
|