二年前に一家総出で、秋月に行ったことがある。 11月のこの時期だったと思うが、『紅葉の名勝』があるとテレビで紹介されていたので、行ってみようということになったのだ。 高速を使うとさほど時間もかからないのだが、そうすると時間が余ってしまい「せっかくここまで来たんだから、○○に行こう」などとなりかねないので、この時は国道を使ってのんびりと行くことにした。 秋月に着いたのは、出発してからおよそ2時間後だった。
さて、秋月は普段でも観光客が多いのだが、やはりテレビの効果だろう、この時はさらに多くの人が来ていた。 メイン通りは人でごった返しており、なかなか前に進めなかった。 嫁ブーは「さすがに紅葉のシーズンやね」などと言って感心していた。 ぼくたちは流れに押され、別に目的にはしてなかった史跡の観光ばかりして歩いた。 その折々に周りの木々を見てみたのだが、紅葉はおろか、まだ緑だらけだった。
茶店で休憩し、それからようやく紅葉を訪ねることにした。 ところが、テレビで見た『紅葉の名勝』がどこにあるのかわからない。 そこで茶店の人に聞いてみた。 「ここの先を左に折れて、まっすぐに行くとお寺があります」 と言う。 どうやら、そこが『紅葉の名勝』らしい。
茶店の人が言ったとおりに歩いていくと、遥か向こうにお寺らしきものが見える。 「ああ、あそこやん」 と、ぼくと嫁ブーは率先して歩いていった。 あぜ道を抜け、民家を抜けて、山道にさしかかったところにそのお寺はあった。
小さなお寺だった。 一面木々に囲まれて、なるほど『紅葉の名勝』と言われるだけのことはある。 しかし、それは赤く色づいていれば、の話である。 その時、若干色づいた部分はあったものの、まだどの木も緑色に覆われていたのだ。 テレビではあんなに赤く色づいていたのに、もう終わったのだろうか。 いや、それはないだろう。 ぼくの中の常識では紅葉が終わると、あとは散るばかりで、緑に色づくなどということはない。 ということは場所が違うのだろう。
ぼくたちはいったん茶店のところまで戻り、その場所を探してみた。 だが、周りの山の中にも、赤く染まっているところはない。 しかたなく、帰路に就いたわけだが、何か釈然としないものがあった。 テレビで見た、あの赤く染まった風景は何だったのだろう。 確かにテロップでは秋月となっていたし、レポーターもそう言っていた。
その二年前の疑問がようやく解けたのだ。 実は先日テレビを見ていて知ったのだが、秋月の紅葉はこの時期ではなく、もう少し後らしいのだ。 11月下旬から12月にかけてらしい。 つまり二年前、あと一週間ほど遅らせて行けば、『紅葉の名勝』にお目にかかることが出来たわけだ。 ということは、テレビは「紅葉すればこうなります」と、その前の年あたりの画像を見せていたのだろう。 画像だけ見て、早とちりしていたわけだ。
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