嫁ブーの会社は、ぼくの家からおよそ4キロ離れた場所にある。 だが、これはあくまでも車道の距離である。 直線距離だとその半分の2キロしか離れていない。
今日、そのたった2キロの距離でこんなことがあった。 夕方、ぼくがテレビでホークスvsライオンズの試合を見ている時に、電話が鳴った。 出てみると嫁ブーだ。
「しんちゃん、寝室の窓閉めた?」 「えっ?」 「今日閉め忘れとったんよ」 「いつものことやないか。何でそんなこと気にするんか?」 「今、すごい雨が降りよるやろ?」 「何も降ってないぞ」 「えーっ、こっちは土砂降りよ」 「こっちは晴れとるぞ」
…ということだった。 電話を切ったあとに外を見てみると、なるほど嫁ブーの会社があるあたりの空は真っ黒になっている。 たった2キロの違いで、一方は大雨、一方は晴れなのである。 「夕立は馬の背を分ける」と言われるが、こういうことがあると、ついその馬の背、つまり雨の切れ目を見てみたくなる。 そこでぼくは出かける準備をした。
ところが、こちらの空も徐々に黒くなってきたのだ。 嫁ブーから電話があった時に遠くに聞こえていたカミナリの音も、だんだん近づいてきた。 そしてその音が最も近くなった時、とうとう雨が降り出した。 土砂降りである。 ぼくは慌てて寝室の窓を閉めに行った。 もちろん、こうなってしまったので、外に出る気も失せてしまった。 雨はその後30分ほどでやんだが、その間けっこう大量に降ったのだった。
それから1時間ほどして、ぼくは実家に行った。 母はぼくの顔を見るなり、「さっき雨が降ったやろ?」と聞いてきた。 「うん、降ったよ」 「でも、空が真っ黒になったわりには、あまり降らんかったねえ」 「えーっ?!」 「その時ちょっと自転車置き場に行ったんやけど、パラパラ程度やったよ」 ぼくの家と実家は、直線だと200メートルくらいしか離れてない。 それでこの差だ。 夕立恐るべしである。
ところで、200メートル先がパラパラだったとしたら、300メートル先は、おそらくまったく降ってなかったのではないだろうか。 ということは、雨の切れ目はその間にあったということになる。 …やはり、見に行けばよかった。
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