ぼくがギターを始めたのは、高校1年の秋だった。 ギターを手に入れた日に簡単な入門書を買ってきて、それで調弦の仕方を覚えた。 当初入門書に頼ったのはそれだけで、あとは吉田拓郎のスコアブックでコードを覚えたのだった。 もちろんそれだけだったので、アルペジオなどというしゃれた弾き方は出来るはずもなく、ただ歌に合わせてピックでジャカジャカ弾くだけだった。 その当時のぼくは、それで充分だったのだ。
ところが、周りにはえらく上手い奴がいて、難しい曲をレコード通りに弾いていた。 それを聞いて、コードだけではダメだと思うようになった。 とはいえ、人に習うのは嫌である。 そこでまたもや入門書を開くことになる。 ところが、その入門書に載っていたのは、いわゆるフォークソングのスタンダードナンバーばかり、それもコピーなどではなく、そういう歌を「簡単なアルペジオで弾こう!」といったものだった。
新たに本を買い込んできたものの、当時市販の教本というのは、レコードやカセットテープなどはついておらず、ただ解説と楽譜で勉強しろというものだった。 そのため、どう弾いていいのかが、まったくわからない。
そういう時に読んだ本に、ギターがうまくなる一番の方法は、レコードをコピーすることだと書いてあった。 そこで、さっそく実行してみたのだが、基本が出来てないぼくには到底無理だった。
半分ギターのことを諦めかけていた時に見つけたのが、エレックレコードの通信教育だった。 パンフレットを見ると、それは半年の講座で、毎月レコードと教本が送られてくるというものだった。 また会員には、将来レコードデビューするチャンスもあるというようなことも書かれていた。 「将来レコードデビューするチャンス」、この殺し文句を見て、ぼくは即座に通信教育の手続きをした。 そして半年後、ぼくは何とか人並みにギターを弾けるようになったのだった。
それから数年後、ぼくは楽器を売るようになっていた。 そこには数々の楽器の他、楽譜や教本などが置いてあったのだが、その教本には教則用のカセットテープが付いていた。 もちろん、価格も通信教育よりずっと安かった。 またそれから数年して、今度はビデオ付きの教則本まで出てきた。 ここまで来れば、マンツーマンで人から教えてもらっているのと変わりはない。 ぼくが通信教育で苦労したコードのポジションも、これだと簡単にわかるのだ。 まさに至れり尽くせりである。 しかも、これまた通信教育よりは、ずっと安い価格だった。
時代は流れて、今はこんなものがあるのだ。
ネットで始める音楽レッスン「ヤマハミュージックレッスンオンライン」 ネットを利用して、ギターなど楽器を教える講座である。 懇切丁寧な内容だし、掲示板を使って情報交換も出来るという。 もしぼくが学生時代に、こういうのに巡り会っていたとしたら、今頃はプロになっていただろう。 ホント、うらやましい話である。
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