| 2005年12月08日(木) |
パッパッパーチクリン |
このところ、体調もよくないし、仕事も何か面白くない。 そこで、暇になると、いつもイトキョンをからかいに行っている。
今日はKさんの誕生日だった。 Kさんは、今年の春に定年満期し、今はアルバイトで働いている。 うちの会社は60歳が定年なので、Kさんは今日で61歳になったわけだ。
『今年61歳ということは、申年か。そうそう、うちのお袋も申年だった。今年73歳だから、Kさんは一回り下になるのか』 そんなことを考えていると、イトキョンが現れた。
「あっ、イトキョン。今日ね、Kさんの誕生日なんよ」 「へえ、そうなん。じゃあ『おめでとう』と言わないけんね。で、Kさんはいくつになったと?」 「73歳」 「えっ、そんなになると?」 「うん」 「73歳にしては若いねえ」 「そうやろ」
今日は何かと忙しく、その後イトキョンと話す時間がとれなかった。 ようやく話が出来たのは閉店前だった。
ぼくはイトキョンに「あんた、Kさんにちゃんと『おめでとう』と言ったね?」と聞いた。 「あっ、忘れとった」 「だめやないね」 「Kさん、まだおるかねえ?」 「もう帰ったよ」 「じゃあ、明日言おう」 「明日じゃ遅いやろ」 「そうか…」
「しかしあんた、すぐ忘れるねえ」 「しかたないやん。わたし、パッパッパーチクリンなんやけ」 「何ね、その『パッパッパーチクリン』っちゃ」 「えっ、言わんかねえ?」 「そんなこと言うわけないやん」 「えーっ、わたしよく言うよ」 「あんただけやろ。『パッパッパーチクリン』とか言うの」 「そうかねえ…」 「夕飯のことで頭がいっぱいになっとるけ、そんな変な言葉が口をついて出てくるんよ」 「今日はちゃんと夕飯を用意してきたけ、頭がいっぱいになってないよ」 「本当ね?」 「うん」
その後、ぼくが閉店準備をしている時に、イトキョンはさっさと帰っていった。 最後に店内を見回していると、一箇所、電気がつきっぱなしになっているところがあった。 行ってみると、天井の照明だけではなく、ショーケースの電気までついていた。 そこはイトキョンの売場だった。 消し忘れて帰ったのだ。 何が、『今日は(夕飯のことで)頭がいっぱいにはなってない』だ。 頭がいっぱいだったから、すべて忘れて帰ったのだ。 やはりイトキョンは、パッパッパーチクリンである。
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