こうやって、どんどん話は進んでいった。 最終的には、9月末に飲みに行くところまで話が出来上がっていた。 ところが今月の頭に、よしこ先生が「ちょっと困ったことになった」と言ってきた。 何でも、他の店に欠員が出たため、当分の間うちに来られないというのだ。 「せっかく約束しとったけど、そんな事情で来れなくなったんよ。ごめんね」 「えっ、何で謝るんですか?」 「だって、行けなくなるじゃない」 「別に職場で会うわけじゃないから、勤務先は関係ないじゃないですか」 「あっ、そうやねえ」 「先生が落ち着いてからでいいですから、連絡してください。こちらはいつでもOKですから」 「わかりました」
ところがそれ以降、よしこ先生から何の連絡もない。 そこで、今週の日曜日、つまり18日に、こちらから連絡を入れてみた。 「あ、よしこ先生ですか?」 「あっ、タカシく…、いやしんちゃん。どうしたと?」 「そちらは落ち着きましたか?」 「うん、何とかね。ここは楽やもん」 「ああ、楽なんですか。じゃあ、日にちも決まったでしょうね?」 「えっ…」 「みんな、先生の連絡待ってるんですよ」 「えーっと…、何やったかねえ?」 「えーっ、また忘れたんですか?」 「‥‥」 「おごり、おごり」 「あっ…。ああ、あの件ね。忘れてないよ」 「もしかして、先生、行きたくないんじゃないですか?」 「い、いや、行きたいよ」 「ああ、よかった。先生は他の店に行って、冷たくなったんかと思った」 「そんなことないよ」 「じゃあ、いつ行きましょうか?」 「あっ、今度の日曜日に、そちらに行くことになっとるんよ。その時に話そ」 「ああ、日曜日に来るんですね。わかりました。その時話しましょう」 ということで、電話を切った。 決戦は、日曜日ということになったわけだ。
さて、よしこ先生は、ぼくの度重なる攻撃をどう思っていたのかというと、別に気にしてはなく、逆に楽しんでいたようだ。 部内の人には「わたし、お酒は飲めんけど、楽しそうやけ行こうね」と言っていたらしい。 さすがお嬢様である。 ただ、最後に「もちろん割り勘でね」と付け加えたというから、ただのお嬢様ではなさそうである。 案外したたかな人なのかもしれない。 もしそうであれば、ぼくは遊ばれていたのだろう。
ま、ともあれ、楽しそうな飲み会になりそうである。 あ、断っておくが、ぼくは最初からよしこ先生におごってもらおうという気は、まったく持ってなかった。 では、なぜここまでよしこ先生に攻撃を仕掛けたのかというと、すべてネタを提供してもらうためである。 おかげで、『よしこ先生』ネタで4日分の日記が書けたわけだ。 こういう場合、逆におごってやらないとならないのかなあ…。
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