頑張る40代!plus

2005年09月20日(火) よしこ先生(3)

Kさんが薬局から出たので、今度はぼくが薬局に入っていった。
「よしこ先生、Kさん来たでしょ?」
「うん」
「何か言ってましたか?」
「わたしがおごると言ったって…」
「そうでしょう。やっぱり約束しとったやないですか」
「‥‥」
「しかし、せっかく行くんだから、大勢で行った方が楽しいですよね」
「えっ!?」

その時、よしこ先生の後ろに、化粧品売場の中リンという子がいるのが見えた。
そこでぼくは中リンに声をかけた。
「おーい中リン、よしこ先生が今度おごってくれるらしいぞ」
中リンはこちらを振り向き、嬉しそうな顔をして、「えっ、ほんとですか?」と言った。
「ほんと、ほんと。『何人でもドーンと来いっ!』らしいぞ」
その間よしこ先生は、例のごとく口がポカンと開らき、目が点になっていた。

その後もぼくは、よしこ先生がうちの店に入った時に何度も薬局に足を運んで、「いつ行きましょうか?」と聞いた。
よしこ先生はちょっと困った顔をしながらも、「出来たら給料日明けのほうがいいんやけど…」と言った。
「そうですね。こちらもそのほうがいい。棚卸しもあることだしね」
「ねえねえ、しんちゃん」
「はい」
「で、何人行くようになったと?」
「えーーっ!?先生知らないんですか?」
「うん、知らない」
「それは困りますねえ。あの時、よしこ先生が『わたしが幹事やるけ』と言ったじゃないですか」
「えっ…。そ、そうやったかねえ…」
「そうですよ。幹事なんだから、ちゃんと人数把握しといてくださいよ」
「‥‥。はい…」

「ということで、いつ行きますか?」
「ねえ、しんちゃん」
「はい」
「一人どのくらい見とったらいいと?」
「まあ場所にもよるだろうけど、だいたい4,5千円といったところじゃないですか」
「そうよねえ」
「10人で4,5万円ということですね」
「えーっ、10人も行くと?」
「そのくらい人数いたんじゃなかったですか?」
「そうやったかねえ」
「“5人タカシ”でしょ。薬局のパートさんが3人でしょ。中リンでしょ。それと先生で、ちょうど10人じゃないですか」
「ああ、そうやねえ。4,5万か…」
そう言うと、先生は深いため息をついた。

それを見て、意地悪しんたは、「えっ、先生行かんとですか?」と聞いた。
先生は「い、いや行くよ」と言う。
「そうでしょ。10人で行くと楽しいですよね」
「うん…」
「何を辛気くさい顔してるんですか。この間みたいに『ドーンと来いっ!』」と言ってくださいよ」
「‥‥」


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