頑張る40代!plus

2005年09月19日(月) よしこ先生(2)

相変わらずよしこ先生の来ている時だけ、ぼくは薬局に行っていた。
だが、“5人タカシ”が嘘だとばれ、名前ネタで遊べなくなったので、何となく面白くない。
そこで、次の作戦を練ることにした。

ある日の朝、会社に行くと、よしこ先生は早々と出勤していた。
「よしこ先生、おはようございます」
「あ、タカシ…、いや、しんちゃんおはよう」
「早いですねえ」
「バスが早く着いたんよ」
「へえ、で、例の件どうなりました?」
「えっ、何の件?」
「あっ、もう忘れたんですか。この間ちゃんと約束したじゃないですか」
「約束…。わたし、何かしんちゃんと約束したかねえ?」
「困りますねえ」
「えっ、えっ、何やったかねえ?」
「後で薬局に行きますから、それまでに思い出しといてくださいよ」
「‥‥、はーい」

それから1時間ほどして…。
「よしこ先生、おはようございます」
「えっ、さっき挨拶したやん」
「で、例の件、どうなりましたか?」
「うっ…。考えたけど、さっぱりわからん。わたし、しんちゃんに何か約束したんかねえ?」
「えーっ、まだ思い出してないんですか?」
「‥‥、すいません…」
「困ったですねえ」
「ねえ、教えて」
「ほら、この間話していたときに、よしこ先生が『今度おごってやるけ、みんなで飲みに行こう』と言ったじゃないですか」
「えーーっ!?わたし、そんな約束したかねえ…」
「忘れたんですか?」
「い、いや、飲みに行くのは約束したかもしれんけど、おごってやるとか言ったかねえ?」
「えーーっ!?言ったやないですか。あの時、Kさんもいっしょにいましたよ」
「あ、そうやったかねえ」
「困りましたねえ。ちょっとKさん連れてきますから」
「…はい」
もちろん、よしこ先生はそんな約束はしていない。
しかし、ぼくがしつこく何回も言っているうちに、自信がなくなってきたのだ。

さっそくぼくはKさんのところに行き、今回の件の一部始終を話し、Kさんに口裏を合わすように頼んだ。
するとKさんは、「それは面白いねえ。さっそく先生のところに行ってこよう」と、薬局に行った。

Kさんはよしこ先生を見つけると、「先生、いつ行くんやったかねえ?」と言った。
「えっ!?」
「わたし、飲みに行こうとか言いましたかねえ?」
「言うたやないね。もう“5人タカシ”は行くようになっとるよ」
「‥‥」
ぼくは遠巻きに、そのやりとりを見ていたが、よしこ先生は口をポカンと開け、目は点になっていた。


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