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2005年09月08日(木) ある日の通勤風景

昨日の朝、家を出て思わず鼻を覆った。
何か臭いのだ。
どんなにおいなのかと聞かれても、ちょっと返答に困るのだが、消毒薬が発酵したような臭いと言ったらいいだろうか。
おそらく、台風が置いていったにおいなのだろう。
とても健康的なにおいだとは思えなかった。

「あまりそのにおいを嗅ぎすぎると、気分が悪くなる」
直観的にそう判断したぼくは、息を止めて車に乗り込んだ。
そして、素早くドアを閉め、エンジンをかけて、エアコンのファンが回り出すのを待った。
ファンが回り出してから、ようやくぼくは空気を吸い込んだ。
ところがである。
車の中も外と同じように、消毒が発酵したような臭いがするのだ。
狭い空間ゆえに、そのにおいはさらに強烈だった。
きっと前日の台風の風が、エアコンの吹き出し口から吹き込んだせいだろう。
とにかく臭い。
しかし、車を降りるわけにはいかず、そのまま出発した。

さすがに運転中は息を止めるわけにはいかない。
そこで窓を開けることにした。
ところが、前日の雨がまだ残っていて、全開すると雨が降り込んでくる。
しかたなく、雨が入り込まない程度に窓を開けた。

においはなかなか取れない。
それどころか、開けた窓から新たなにおいが入ってくるのだ。
さらにそのにおいを嗅ぐたびに、つい不健康なことをイメージしてしまう。
そのイメージとは、大量のばい菌に自分が侵されている姿だ。
「このままじゃ、完全に気分が悪くなってしまう」
そう思ったぼくは、せめてイメージに気を取られまいと、CDをかけ、それに合わせて歌を歌うことにした。
これは効果的だった。
歌っている間は、ばい菌から逃れられている、つまりイメージが消えてしまうのだ。

しかし、そう喜んでばかりもいられなかった。
歌ったら歌ったで、新たな問題がぼくを襲う。
どういう問題かというと、走行中はいいのだが、信号待ちの時は窓を開けているせいで声が外に漏れる。
AメロとかBメロとかいう部分を歌っているなら、そうまでもなかったのだろうが、タイミングがいいというのか悪いというのか、そういうときに限って、サビの部分に入るのだ。
サビを歌う時、ぼくは力んで、どうしても大声を張り上げてしまう。
そのたびに、横の車の人が変な顔をしてこちらを見る。
気にしなければいいのだが、これが気になって仕方ない。
ということで、急に声が萎えてしまう。

「昔ミュージシャンを目指していたというし、ネット上に臆面もなく歌を上げているくらいだから、歌っているのを人に聞かれても、何も気にはならないのではないのか」、と思われるかもしれない。
が、そうでない場合もあるのだ。
人前で歌う時は、それなりの気構えがいるものである。
しかし、ぼくのいる環境はほとんど我が家とも言っていい、プライベートな車の中なのだ。
しかも時間は朝である。
とてもそんな気構えにはなれない。

さて、声が萎えてしまうと、またばい菌イメージが蘇る。
そこで信号が青になるのを待って、再び熱唱を始める。
そしてまた、赤信号で声が萎える。
会社に着くまでの約30分間、ぼくはそうやって、におい、そして自分と闘っていたのだった。


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