頑張る40代!plus

2005年03月27日(日) お金の行方

今日ふと思い出したことがある。
それは、高校2年の頃の話である。

他のクラスの男が、先生の車にバイクをぶつけて傷を入れたことがあった。
先生は怒り、その男に「弁償しろ」と言った。
うちのクラスのSは、その男の友人だった。
男からそのことを聞いたSは、「どうしようか」とぼくに話を持ちかけてきた。
「修理代ち、高く付くんやろ?」
「うん。7万かかると言われたらしい」
「7万かあ。大きいのう。一人じゃどうしようも出来んのう」
「そうやろ。どうしようか?」
「こういう場合は、カンパやろ」
「やっぱりそうなるか」
「それしかないやん」
「じゃあ、悪いけど、しんた集めてくれん?」
「え、おれが?何でおれが集めないけんとか。別にあいつと親しいわけでもないのに」
「頼むっちゃ。おまえ顔広いんやけ」
Sに押されて、結局ぼくは引き受けた。

翌日からぼくは箱を持って各クラスに出向き、「実は…」と先ほどの話をして、お金を集めて回った。
1週間ほどお金を集めた結果、何万かのお金が集まった。
「もう少しで目標達成やの」とクラスの連中と話していたときだった。
Sが「しんた悪い。せっかく集めてもらったけど、いらんようになった」と言ってきた。
「えっ、何で?」
「先生が、『もういい』と言ったらしい」
「あーっ?おまえ、この金どうするんか。もう返せんぞ。誰がいくら払ったか、もうわからんし」
「そうか。どうしようか?」
「『どうしようか?』、おまえが考えれ。おれは知らんぞ」
そう言って、箱ごとその男に渡した。
その男も困ったようで、「しかたない。○○に預けて、どうにかしてもらおう」

それから何日かたって、ぼくはSに「おい、あの金どうなったんか?」と聞いてみた。
「あ、そうやった。あの金どうなったんかのう」
「えっ、知らんとか?」
「おう、忘れとった」
「○○に預けるとか言いよったやないか」
「ああ、そうやったのう」
ということで、ぼくたちはその○○のところに行って、金の行方を聞いた。
○○は「ああ、そうやったのう。金預かってから、△△に預けたんやけど、その後は知らん」と言う。
その△△も、そのお金のことは忘れていた。
「××に預けたような気がするんやけど…」
話はどんどん広がっていった。
最後に聞いた人間は、「ああ、カンパの金やろ。しんた、おまえが集めよったやん。おまえ知らんとか?」と言った。
ぼくは「おれが知らんけ、聞きよるんやろ」と言った。
「そうか。おれも知らん」
「・・・」

さて、あのお金は、いったいどうなったのだろうか?
わかっているのは、ぼくたちが聞いて回った時、誰もがそのお金のことを忘れていたということだ。
誰も嘘をついている様子はなかった。
いったいどこに消えたのだろう。
30年来の謎である。


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