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2004年09月17日(金) ヒロミちゃん3

ヒロミがぼくの部下になったのは、昭和61年9月のことだった。
店の改装でヒロミの売場がぼくの部門の隣になり、ぼくがいっしょにその部門を見ることになったのである。
翌年の2月にヒロミは寿退社するので、ぼくの部下だった期間は約半年だったことになる。

その頃、クレジット会社からオータグロという新入社員が派遣されていた。
気障な感じの男だった。
いつも暇をもてあまして、仕事もせずに店内をブラついていた。
そのブラつく姿が変だった。
何かリズムをとっているのか、体を左右に振り、指パッチンをしながら歩いているのだ。
ぼくがそれを見て「あの歩き方が悔しいのう」とヒロミに言うと、ヒロミは「そうやろ。あいつ変やろ」と言った。
「あいつをブラつかせんようにせないけん」
「そうやねえ」
「どうしようかのう」
「何かギャフンと言わせたいねえ」
いろいろと考えたあげく、電話作戦を採ることにした。

作戦とはいうものの、大したことをやったわけではない。
オータグロが持ち場を離れた時に、オータグロのカウンターに電話をかけるだけである。
そして受話器を取った時に切るのだ。
ばれると困るので、あらかじめこちらの電話はカウンターの中に入れておいた。
そして、ぼくもヒロミもオータグロからよく見える位置に立ち、他のことをやっているふりをする。
どちらかの指が、電話機のボタンを押していた。
何度もやるとばれるので、当初は日に3度までにとどめることにしていた。
だが、その慌てぶりがおかしかったので、その後だんだんエスカレートしていき、何度もやることになる。
そのうちオータグロは警戒して、持ち場を離れないようになった。

「しんたさん、最近オータグロ、持ち場を離れんようになったねえ」
「そうっちゃ。面白くないのう」
「また何かしたいねえ」
「おう」
ぼくたちは次の作戦を練った。
そしてとった作戦は、友だち作戦だった。
とりあえずオータグロと仲良くなり、こちらに遊びに来させるようにするのだ。
「オータグロくーん」
「はーい」
これを何度かやっているうちに、こちらに対して警戒心を持たなくなる。
そこで電話作戦を再開する。というものだった。
もちろん何度もやっているとばれるので、今回はほどほどにしておくことにした。

案の定、オータグロはこの作戦に引っかかった。
しかし、そのうちオータグロも気がついたのか、すぐに電話には出ないようになった。
そこでぼくが、「この間オータグロ君がおらん時に電話が鳴りよったんよ。出らんと悪いけ、とってみたらお客さんからやった。『何で、すぐに出らんのか』とえらい剣幕で怒られたんよ」と言った。
するとヒロミも、間をおかずに「そうそう。わたしも電話とったことあるんやけど、同じこと言われたよ」と言った。
それが効いたのか、オータグロはまた慌てて電話まで走ることになった。


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