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2004年09月16日(木) ヒロミちゃん2

ヒロミがぼくの配下になる前にいた部門でのこと。
仕事中、暇になると、ヒロミは決まってぼくの嫁さんに内線電話をかけていた。
ある日の午前中、いつもようにヒロミから嫁さんに電話がかかった。
『今日は何だろう?』と受話器を取ると、何の前置きもなく「悲しいことがあったんよ。帰るね」と言うだけ言って電話を切ったらしい。
心配した嫁さんがヒロミの売場に電話をしてみると、「悲しいこと…」の電話をかけた後、さっさと早退したという。
何があったのかとその売場の人に聞いてみると、どうもそこの主任が転勤するらしい。
家庭内で何があったわけではないので、帰った原因はそのことだと思われる。
しかし、上司の転勤は確かに彼女にとっては悲しいことかもしれないが、別に早退するほどのことはないだろう。
もしかしたらヒロミは、昔から悲しいことがあれば、早退する人間だったのかもしれない。

その頃はよくカラオケスナックに行っていたものだ。
何かにかこつけては、すぐに飲みに行く。
そのメンバーの中に、いつもヒロミはいた。
彼女は歌がうまかった。
が、一曲通して歌うことは希だった。
1番を歌い終わると、「はい、○○さん。2番歌って」などと言い、マイクを渡す。
マイクを渡されたほうが歌っている最中、ヒロミはその歌を聴くこともせずに、次の歌を探していた。
その歌が終わった時には、もう次の曲が入っている。
もちろんヒロミが入れたのだ。
そしてまた1番だけ歌って、次の曲を探していた。

ヒロミが、小林明子の『恋におちて〜Fall In Love〜』を歌った時のことだった。
うちの嫁さんに「いっしょに歌おうか」と言って誘った。
嫁さんが「いいよ」と言うと、ヒロミは「じゃあ私が1番歌うけ、あんた2番ね」と言った。
2番は英語である。
つまり自分は日本語の部分を歌い、嫁さんには英語の部分を歌わせてたわけである。
うちの嫁さんは、ぼくと同じく英語がだめなので、戸惑っているうちに曲は終わってしまった。
もちろん、すぐに次の曲が始まったのは言うまでもない。

さて、そういうヒロミといっしょに仕事をしていて面白かったのは、ヒロミはその美貌のせいか、小学生や中学生の男子を手なづけることがうまく、すぐに子分にしていたことだ。
子分にして何をしていたかというと、使い走りをさせていたのである。
ある時、小学生の子分がやってきた。
ヒロミはその子に「ねえねえ、角のスーパーに行って、158円のアーモンドグリコ買ってきてくれん?」と頼んでいた。
子分が嫌そうな顔をしたので、ヒロミは「ちゃんと、お釣りやるけ」と言った。
子分は「それならいいよ」と言う。
ヒロミは財布を開いて、子分に小銭を手渡した。
160円だった。
子分はそれを見て、「えっ!?」と言った。
ヒロミは何食わぬ顔で、「お願いね。お釣りはいらんけ」と言った。
子分は渋々買いに行った。
ヒロミには、そういうちゃっかりした面もあった。


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