先週の火曜日、つまり台風18号が吹き荒れていた日のこと。 その日の日記に、家から一歩も出ずに退屈な時間を送っていた、ということを書いた。 物干し竿が乱舞していた午前中はともかく、午後からは本当に暇だった。 そこで、嫁さんに「なんか面白いことないか?」と聞いてみた。 休みの日は、一度は外に出ないと気がすまない嫁さんだから、きっと「思いつかん」と答えるだろうと思っていた。 ところが嫁さん、とっておきの企画をぼくに披露した。 それは、 「ヒロミに電話してみようや」 だった。
ヒロミとは嫁さんの高校時代の同級生である。 それと同時に、ぼくの元部下である。 顔立ちがよく且つ長身で、かなり目立つ女性だった。 当然上司からの受けもよく、たいがいのわがままを許してもらっていた。 決して、職場の華的な内輪美人ではない。 おそらくその美貌は全国的にも通用するだろう。 その証拠に、テレビにも出たことがある。 街を歩いている時に、突然レポーターから声をかけられたのだ。 その時の企画は『街角美人』だった。 それだけでも、職場によくいる『内輪美人』でないことがおわかりいただけるだろう。
ぼくが生まれてから今まで出会った女性の中でも、1,2位にランクされる美女である。 しかし、ぼくはヒロミを素直に美女とは認めているわけではない。 彼女を「美女」と呼ぶには、ひとつの前提が必要となるからだ。 つまりその前提条件を満たした時、初めてヒロミは美女となるのだ。 その条件とは何か? それは「しゃべらなければ」ということである。 実はヒロミは、かなりの変わり者なのだ。 口を開くとおかしなことばかり言っている。 ぼくが生まれてから今までであった女性の中でも、1,2位にランクされる変わり者である。
ぼくの部門にいた頃の話である。 仕事中のことだった。 「しんたさん、トイレ行ってくるけ」と言うので、「ああ」と返事をすると「うんこやけねえ、長いよ」と言う。 それからいっときして帰ってきたのだが、帰って来るなり「ねえねえ、しんたさん。今ね、うんこが出かかっとたんよ。そしたらね、掃除のおばちゃんがトイレに入ってきたっちゃ」と言った。 「それがどうかしたんか?」 「そしたらね。途中まで出とったうんこが引っ込んだんよ。ああ、気持ち悪い」 気持ち悪いのはこちらである。 飯前なのに、うんこが出たり入ったりするのを想像してしまったじゃないか。 それ以前に、職場でする会話ではない。
|