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2004年05月21日(金) 洞海湾を汚すな!

先月、近郊の遠賀町で、青酸カリの入った金庫が盗まれるという事件があった。
犯人は、ぼくと同じ八幡西区に住む人間で、捕まった時「金目当てに金庫を盗んだが、青酸カリが入っていて驚いた」と供述。
犯人は知人に相談し、その青酸カリを盗んだバイクの座席下に隠しておいたという。

ところが、そのバイクが盗まれた。
よくよく運のないバイクである。
バイクを盗んだのは、金庫犯と同じ区−もちろんぼくとも同じ区−に住む少年二人だった。
座席の鍵を開けてみると、そこには青酸カリが入っていた。
そこで「怖くなって、重りとして小石を(青酸カリの)容器内に詰め、ふたを閉めて洞海湾に投げ捨てた」らしい。

今日、ワイドショーやニュース番組では、このニュースを繰り返し放送していた。
ニュースでは、洞海湾やその周辺のゴミ置き場に容器がないかと、係員が探している映像が流れていた。
現場はぼくの家から4,5キロ離れた場所だった。

洞海湾。
古くは日本書紀にその名前が出てくる。
神功皇后は九州入りの際、ここに入港したのだ。
中近世は、交通の要所となった。
馬関と黒崎の間に定期船が出ていたので、長崎に行く人は門司に行かず、洞海湾に入ってきた。
そのため、黒崎は長崎街道の筑前の起点となっている。
かの坂本龍馬は、太宰府の三条実美に謁見する際、小倉からではなく、黒崎から陸路をとっている。
近代は北九州工業地帯の中心地となる。
八幡製鉄や三菱化成といった重化学工業の、主要工場がここに集結した。
また、火野葦平の『花と龍』の舞台になったことでも知られている。
現在は、市内有数のデートスポットになっている。
喜ばしいことではないが、暴走族の溜まり場にもなっている。

ぼくはこの海(湾)の目と鼻の先に住んでいるため、物心ついた頃からずっとこの洞海湾を見て育ってきた。
つまり、ぼくのふるさとである。
企業の廃液の垂れ流しのため、久しく『死の海』と呼ばれていた洞海湾だったが、最近ようやく魚や水鳥が戻ってきた。
その矢先にこの事件である。

専門家は「膨大な海水量でその濃度が薄くなるため、被害はほとんどないだろう」とのたまっていた。
何が「被害はない」だ。
この海で、車エビ漁をやって生活している人がいる。
この人は被害者じゃないのか?
この事件のせいで、イメージダウンは必至である。
当然、車エビは売れなくなるだろう。
釣り糸を垂れている人だっているのだ。
この人は被害者じゃないのか?
もしかしたら、その魚を食って生活しているのかもしれないじゃないか。
まあ専門家を責めてもしかたがないことではあるが。

とにかく、悪いのは少年バカ二人である。
いったい何を考えているんだ。
洞海湾は、校歌にも出てきただろうが。
お前たちのふるさとでもあるだろうが。
そんな神聖な場所に、毒物を捨てるとは何ごとだ。
ふるさとの海を汚す奴は、このしろげしんたさんが許さん!


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