さて、H子(※)である。 3日前の日記で「泣いて家に帰った」ことを書いたが、その日彼女はレジの掃除当番だったらしい。 レジの掃除当番とは、朝誰よりも早く来て、レジ周りの清掃や、各レジに備え付けてあるぞうきんを洗ったりしなければならない。 その日H子はちゃんと早く出勤して、レジ周りの清掃はやったらしいのだが、何とぞうきんのほうはレジ長と自分のだけしか洗っていなかったらしく、他の人のぞうきんは真っ黒なままだったという。 その後で、H子は大泣きして帰ることになるのだが、ぞうきんの件を指摘されるのが怖くて泣いた、ということも一因になっているのかもしれない。
そして今日、いよいよH子が薬局勤務になった。 朝ぼくが出勤すると、すでにH子は出勤しており、パートMさんから細かい説明を受けていた。 実は説明を受けるのは、今日に始まったことではない。 内示を受けた日から、2冊で税込105円の手帳を買い込んで、薬局のパートさん連中にいろいろと説明を受けていたのだ。 手帳に書き込んだかどうかは定かではない。 その際パートさんたちは、「H先生(※)はあんな人やけ、何言われてもハイハイと言って聞いといたほうがいいよ」とか、「わからないことは自分で判断せずに、何でも先生に尋ねてね」などとアドバイスしたらしい。 すると、H子は何を勘違いしたのか、「『ハイハイ』と言って聞くというのは、ゴマをすれと言うことですか?」とか、「わたし、先生に進言や意見をしていきます」などと答え、相変わらずの大バカぶりを発揮していたという。 確かにH子はH先生より顔は大きいが、ど素人の彼女が薬剤師という国家資格をもっている先生に、「進言・意見」とは何事か。 それを聞いた人はみな「10年早い」と言っていたが、ぼくは「いや、10年で間に合うわけない。人生を一度終えてから言え」と思っていた。
そしていよいよH先生との対面である。 他の売場の人間は、よほどこの組み合わせに興味があったのか、みな遠巻きに薬局を見ていた。 もちろんぼくも気になって、薬局の前を往ったり来たりしていた。 それに気がついた先生は、何とも言えぬ顔をして、ぼくに手を振っていた。
そのH先生がH子に指示したこと、それは「今日は、(売場の雰囲気になれるために)そこに立っとくだけでいい」だけだった。 ところが、それを言葉どおりに受け取ったH子は、ずっと売場のど真ん中に立っていたらしい。 そのため、「体が大きいけ通路塞ぐんよね。お客さんが入りにくそうにしていた」(H先生談)という。
午後になり、4時間勤務のH子は帰って行った。 すぐさまぼくは薬局に行き、状況を聞いた。 が、今日は期待されたほどの大きな事件はなかったようだった。 しかし、H先生とH子の組み合わせである。 きっと何かをやってくれるだろう。 当分目が離せない。
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