| 2004年05月12日(水) |
知らんのはお前だけだ |
うちの店のレジに、H子というちょっと変わった、というよりバカなアルバイトがいる。 歳は30代前半で、独身である。 以前は大手のスーパーで勤めていたらしく、そのことに関して変なプライドを持っている。 そのプライドのせいなのか、レジの長以外の人の言うことをまったくきかないという。 またそのレジ長がいない時は、勝手に持ち場を離れ、店の中をウロウロしたりしている。 それを見かねて同じ部門の人が注意すると、いじめられていると受け止める。 先日、彼女の父親が店にやってきて、レジの人一人一人を睨み付けていたという。 おそらく彼女が「店の人にいじめられている」と父親に報告したのだろう。
そういったこともあって、レジの人たちはかなり頭に来ていたようだ。 そしてついに反乱が起きた。 午前中勤務の人たちが勤務後、店長のもとへなだれ込み、直接談判を行ったのだ。 「私たち、もうあんな人といっしょに仕事したくありません!」 「ああいう人と仕事をするくらいなら、辞めます!」 かなり強い口調で、店長に詰め寄ったらしい。 店長もこれには参ったらしく、すぐに彼女の異動を考えた。
まず手始めに、今一番手薄になっている部門に打診した。 ところが、その部門の人も彼女の噂は聞いていて、 「あんな人いりません。あの人が来るくらいなら、私辞めます」 と怒り顔で言ってのけた。 その剣幕に恐れ入った店長は、その人の前で彼女の話はしなくなった。
頭を抱えた店長が次に出した案は、薬局のH先生(今年の3月22日、及び23日の日記参照)の下で働かせることだった。 もちろんH先生も彼女の噂は聞いていたようで、 「店長から『H子をまわす』と言われたんよ。困ったことになった。断らないけん」 と店中の人に言っていた。
が、先生は策士である。 自分から店長に断ることはしなかった。 そこのパートさんたちにいらぬことを吹き込んで、彼女たちが嫌がるようにしむけ、彼女たちの口から、店長に断らせるようにしたのだ。 しかし、 「H子さんが来るなら、私たち辞めます」 「ああ、辞めてもらってもいいですよ」 ということになり、H先生の目論見は儚くも崩れてた。 しかたなく、H先生が談判に行った。 が、店長に「パートさんも辞めると言ってたけど、ついでに先生も辞めますか?」と言われ、あえなく撃沈。 結局、「10日間、様子を見ましょう」ということになった。 その後店長はH子を呼んで異動の旨を知らせ、「まだ内示だから、誰にも言わないように」と念を押した。 その一部始終の話は、H先生を通して店中に伝わった。
ところが、今日のこと。 K主任という人のところにH子がやって来て、 「K主任、私、今度薬局に異動になるんですよ。あ、でも、まだ内示だから誰にも言ってはいけないと言われたんです。誰にも言わないで下さいね」 と嬉しそうに言ったそうだ。 その話を、K主任はぼくにしてくれた。 それを聞いて、ぼくは大笑いした。 「誰にも言うなって、みんな知ってることじゃないですか」 「そうそう、H子は一番最後に知ったんやけね」 その話が、また店中を駆けめぐった。
何も知らないH子は、食堂にいた薬局のパートさんを捕まえて、 「わたし今度、薬局に行くことになったんですよ。よろしくお願いします。ああ、まだ内示だから、誰にも言わないで下さいね」 と、大きな声で言っていた。 つくづく大バカ者である。
しかし、H先生とバカH子の組み合わせは、傍から見ると大いに楽しめる組み合わせだ。 16日に異動になるらしいが、早くその日が来ないかと、ぼくは心待ちにしている。
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