中学2年の頃、ぼくはあまり頭を洗ったことがなく、たまに床屋で洗ってもらう程度だった。 その床屋のおばちゃんは、頭を洗う時、決まって「痒いとこあるね?」と聞いてきた。 そこでぼくは「全部痒い」と答えていた。 自分ではわからなかったが、頭の臭いもかなりきつかったようで、よく女子から「しんた君、頭洗いよらんやろ?」と言われていた。 なぜ、頭を洗わなかったか? それは面倒くさかったからである。
そんなある日、母がトニックシャンプーという物を買ってきた。 それまでヘアトニックすらつけたことがなかったから、「トニック」という言葉に大いに興味を持った。 で、さっそくその日、そのシャンプーを使ってみることにした。 シャンプーを手に取り、頭をゴシゴシやった。 その途端、それまでに味わったことのない爽快感が、頭全体を包んだ。 それ以来、そのトニックシャンプーが病みつきになってしまった。 とはいえ、頭を洗うのは3日に一度程度だった。 気持ちはいいものの、相変わらず頭を洗うのが面倒なのだ。
2日に一度のペースになったのは、高校に入ってからだった。 そのペースに変えたのは、運動部に入ったせいで頻繁に汗をかくようになったことと、若干しゃれっ気が出てきたことによる。 その頃にはシャンプーに加え、リンスも使うようになっていた。 トニックシャンプーの姉妹品、トニックリンスが発売されたからだ。 ただ、使い始めには戸惑ったものだった。 適量がわからない。 多めにつけると、何度洗い流してもぬるぬるが取れない。 かといって少なめでやると、使った気がしない。 また、説明書きには、「トニックとしても使えますので、その場合は洗い流さないで下さい」などと書いてある。 それを真に受けて、学校の行きがけに、たっぷりとトニックリンスをつけたものだから、バスの中でリンスが垂れてきたこともある。 それに懲りて、そのリンスをトニック代わりにするのはやめ、ブラバスやエロイカといった正当のヘアトニックを使うようになった。
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