《頑張る肉屋!》 隣のスーパーに、肉の惣菜屋がある。 10年前のオープンの時から、ずっとそのスーパーに入っているテナントである。 社長は女性で、かなりのやり手だという。 多くの顧客を持ち、売り上げもかなりいいと聞いている。
さて、今回の改装で、スーパー側から「改装後は自社で肉の惣菜をやりたいので、出て行ってくれ」という話が出た。 それを聞いた女社長は烈火のごとく怒り、「絶対出て行かん!」と言い張った。 「出て行けというのは、うちに廃業しろというのに等しい。うちは少数ながらも人を雇ってやっている。もし廃業となると、その人たちは職を失うことになる。その人たちの生活のことを考えると、出て行くわけはいかんじゃないか」 というのが、肉屋側の言い分である。 一方のスーパー側は、 「他のテナントさんも、すべて撤退してもらっている。お宅だけ特別というわけにはいかない」 という、理の通らない苦しい言い分になっている。 その話が出てから2ヶ月以上たつが、いまだ解決してない。 スーパー側は「外に店を構えてやるから」などと譲歩案を出しているのだが、女社長は「絶対に出て行かん」の一点張りだ。 あげくに裁判に持ち込むという話まで出てきた。
ここまでは、ぼくの店にとっては対岸の火事程度の話だった。 ところが、その火事がうちの店まで飛び火してきたのだ。 このテナントが退かないと、改装工事に入れないというのだ。 改装工事が出来ないとなると、ぼくが3週間近くやってきた作業はすべて無駄になってしまうが、そんなことは大したことではない。
店は閉めているのに工事をしないということになれば、ぼくたちは会社に来ても何も仕事がないことになる。 ということは、決着がつくまで休まなくてはならない。 休みともなれば、月の公休を消化してしまえば、あとは有給休暇を使うことになる。 もちろん有給であるから、給料はもらえる。 しかし、そんなに多く休暇は残ってない。 もし、有給休暇を使い果たしてしまえば、今度はぼくたちがおマンマの食い上げになるのだ。 しかも、会社には「アルバイトをしてはならない」という規約がある。 もし有給休暇を使い果たしたら、いったいどうすればいいのだろう。 こちらだって生活がかかっているんだから、早く決着をつけてくれ。
《マイペース》 ぼくが「人をあてにせん!」と宣言し、売場の人間だけで改装準備を始めてから、もう20日目になる。 売場は3人体制なのだが、休みのローテーションがあるので、この3人が顔を揃えるのは、週に2日である。 まあ、そのことを度外視して計算してみると、1日3人だから、延べ人数は3人×20日で60人ということになる。 もし今日までの作業を一日でやろうとすると、60人の人を集めなければならない計算である。 どの店も忙しいのに、たかだか100坪程度の売場を手伝うのに60人もの人員を手配してくれるはずはない。 作業効率を考えると、確かに作業ははかどらないが、人員手配のことを考えると、ぼくの宣言は正しかったと思える。
ま、そんな自慢話はどうでもいいのだが、この作業を通じて感じたことなのだが、ぼくはわりとマイペースな人間である。 自分の考えたことを自分の中で吟味し、それを自分で実行している。 よほどのことがない限り、人の手を借りることはないし、また人に手を貸すこともない。 とにかく、自分のペースを守り、楽しみながら作業をやっている。 改めて、「ふーん、おれにはこんなところがあったんだ」と思った次第である。
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