| 2003年03月21日(金) |
販売業も危険な職種である |
販売の仕事といえば、危険のない業種だと思われている。 ところがそうではない。 表では、危険とは無縁の接客に明け暮れているようだが、一歩裏に入ると、そこは危険地帯である。 そういう場所で、ぼくたち販売員は危険を伴う作業をやっている。 重たいものを持ったり、高いところに上ったり、什器を壊したり、時には高圧電線と隣り合わせになることもある。 例えばテレビなどは、重さ50キロを超えるものはざらである。 こういった商品を、倉庫で積み上げたりしている。 貧しい店なので、倉庫用のフォークリフトなどない。 すべて手作業である。 この間、32型のハイビジョンテレビ積み上げたのだが、その重さが65キロだった。 部門に男はぼくだけしかいないので、こういう倉庫整理はいつも一人でやっている。
また、在庫が置いてあるのは倉庫だけではない。 屋根裏にも置いてあるのだが、そこに上るための階段やはしごは用意されていない。 そのため、商品や什器を使って上っている。 一つ間違えば、転落事故につながりかねない。
什器を壊したり組み立てたりすることもある。 今回の改装準備でその作業をやっているのだが、什器はそのほとんどがスチール製である。 手を切ったりすることはしょっちゅうで、他にも指を挟んだり、時には骨組みが倒れてくることさえある。 前にいた会社でリニューアルをやった時、業者のアルバイトがこの什器で指を落としかけたことがある。 素早く処置をしたので、指を切断することはなかったのだが、慎重にやらないとこういう事故も起こりうる。
さて、こういう作業の時には、軍手をしてやるのが普通である。 若い頃、運送会社でアルバイトをしたことがあるのだが、その時、冷蔵庫や家具といった重くかさばるものをお客さんの家によく運んだものだ。 一戸建ちの家は重いだけですんだのだが、問題は公営や公団の団地である。 エレベーターがあれば問題はない。 しかし、そうそうエレベーターつきの団地などはない。 ほとんどの団地は階段のみである。 しかも狭い。 階段がまっすぐなら問題はない。 しかし、こういう場所は必ず踊り場から折り返しになっている。 そのため、踊り場で、品物を切り返さなくてはならない。 広い階段ならさほどでもないのだが、これが狭い階段だと大変である。 うまく切れないから、いったん品物を立てて持ち直すのだ。 その時、品物を壁に当ててはならない。 「手は傷ついてもいいけど、品物には傷を入れるな」とよく言われたものだ。 その言葉をぼくは忠実に守り、何度も壁で手をすりむいた。 時には深く皮がむけて、白身が見えることさえあった。
そういう怪我を極力抑えてくれるのが軍手である。 しかし、ぼくはいつもそれをしていなかった。 ぼくも最初は、軍手をはめていた。 ところが、軍手をしていると、指先の感覚がなくなったように思え、作業に差し支えがあるのだ。 重たいものを持つ時も、軍手が気になって力が入らない。 そういう理由から、ぼくは軍手を着けない。 そのため、いくら怪我しても文句は言えなかった。 しかし、そのうちに手の皮が厚くなり、少々切っても血が出るようなことはなくなった。
さて、昨日もお話ししたとおり、今、改装の準備という大変危険な作業を行っている。 重たいものを持っている。 高いところに上がっている。 什器を壊している。 いつも高圧電線と隣り合わせだ。 あと3日で、今やっている作業を終わらせなくてはならないのだが、それまで無事に過ごせるかどうかが問題だ。 軍手をしなくてもいい手に、すべてをかけるしかない。
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