唐突にこんな話をして申し訳ないが、ぼくはつい何年か前まで、女性のナプキンの使い方を知らなかった。 てっきり、あれは患部に貼るものとばかり思っていたのだ。 わりと女性の多い家系だったにもかかわらず、こういうことには無関心だった。 もしぼくが日用品などの売場を持たされていたら、大恥をかいたことだろう。
なぜこういう話をするかといえば、ぼくの店によくナプキンの宣伝販売に来るおばさんがいる。 その人は、ぼくがその前を通ると、いつも「いらっしゃいませ」と言うのだ。 ぼくは男である。 それに、一応制服を着ている社員である。 何を思って言っているのかは知らないが、こんなことはやめてほしい。 そのナプキンおばさんが頭にこびりついて、つい冒頭の話になったわけである。
中学の頃、昼休みに女子と男子に別れてバレーボールをしたことがある。 もちろん体育の時間ではないので、ジャージなどははいてない。 前衛にいた女子がスパイクを打った時だった。 サッと風が吹いて、その女子のスカートがめくりあがった。 ぼくはその瞬間を見逃したのだが、他の男子は「オオッ!!」と歓声を上げた。 その女子は真っ赤な顔をしていた。 その後のことである。 他の女子がぼくのところに来て、「しんた君、見たでしょ?」と言った。 「いや、見てないよ」 「そんなことはない。あんたの位置からだと丸見えなんだから」 「見てないっちゃ」 その女子は、後々まで疑っていた。 ぼくは本当に見てない!
同じく中学の頃の話。 その日ぼくは親戚の家に泊まることになっていた。 昼間友人と遊び、親戚の家に向かったのは、夜の7時ごろだった。 季節は春だったので、7時にはもう日が沈んでいる。 ぼくの5メートルほど前を、女の人が歩いていた。 行く方向がいっしょだったのだろう。 駅から、ずっとぼくの前を歩いていた。 川沿いに歩いていくと、道が狭くなるところがある。 そこで、その女の人はぼくの存在に気づいたようだった。 女の人は少し早歩きになった。 そこから少し行った所で、ぼくは左に曲がり路地に入るのだが、その女の人もそこから右に入ってしまった。 ぼくはどうしようかと迷った。 その女の人は、ぼくにつけられていると思っている。 このまま行き過ぎてもいいが、ぼくも左に曲がらないと、親戚の家に行くことは出来ない。 そこで思い切って、ぼくも左に曲がった。 すると、その女の人は走り出し、「おねえさーん」と言って、一軒の家に飛び込んだ。 どうやらそこが彼女の家だったようだ。 ぼくが彼女の家を通り過ぎる時、彼女はその「おねえさーん」といっしょに、玄関からぼくを見ていた。 ぼくは知らん顔をして通り過ぎた。 ぼくは変態ではない!
高校の頃、保健の時間に人命救助の講義があった。 その中で、心臓マッサージやマウス・トゥ・マウスの実践があったのだが、そのモデルを誰がやるか、ということになった。 じゃんけんで決めようということになったのだが、誰かが「こういうことは、保健委員がせないけんやろうが」と言い出した。 「そりゃそうだ」ということになり、しかたなくぼくが犠牲者になった。 先生が「ちゃんとハンカチをかぶせてしなさい」と言ったのだが、いるんです。こういう時に、マジになる奴が。 もちろんハンカチの上からだったけど、そいつは唇をしっかりとぼくの唇に当て、息を入れてきた。 肺が膨れていく。 そいつは当時からヘビースモーカーだった。 ぼくの息は、しばらくタバコ臭かった。 後でそいつは、ぼくの唇を奪ったと、いろんなところで触れて回った。 ある日、女子から「しんた君、○君の唇奪ったらしいね」と言われ、変な目で見られた。
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