スナックおのれ
毛。



 結論「献血しよう!」、おや?

今日は書きたいことが山程ある。山程ありすぎて、うまく書けるかどうかない。いつも自信があって書いているわけじゃないけれど、今日のテーマに関しては、なんだかまだ自分でも掴みきれていない。やばいなあ、と思いつつも「書いてやる!」と言う好戦的な気持ちで書く。こんなんじゃ読む人もやってられんよなあ、と思いつつ、ホント、ごめんなさい。

第一の情景/土曜日・昼
先日、電車の飛びこみ自殺現場に出くわした。出くわしたといっても、まさに飛びこんだ所を見たわけではなくて、わずか50分前に人が飛び降り、駅員や警察がまさに「片付け」を終わらせた、そんな現場だった。現場には、ピンクの肉片がホームに沿った線路に点々と残っていて、キヨスクのおばちゃんが声高にその事件の内容を話しているのが聞こえた。その場に居合わせた皆、どこか勝手な方向を見ていたけれど、明らかにおばちゃんの声に耳を傾けている。同じくその場所に居合わせた私と友人も例外ではなく、おばちゃんの話にじっと耳を傾けていた。
「若い女の人だったらしいんだけどね、ほら、あそこの水がかかっている場所、そこに大きいのがあったんだって。私も仕事しているからアレでしょ、実際には見てないけれど、特急電車だって、いやだねえ、この間もあったばかりなのにねえ」
おばちゃんが、電車を待つ人に「なにがあったの?」と言われる度に同じ話を繰り返しているのが聞こえた。
新宿方面に向かう電車の中で、必然、私と友人との会話はなく、お互いなにかを考えているようで、それを逸らすために「紅葉が始まったね」とか「学校はどう?」とか全く違う話をしていた。その日は、少し寒かったけれど、見事な秋晴れの日で、友人がぽつりと「なにもこんな天気の良い日じゃなくてもね」という声が聞こえた。私はぼんやりと「こんな日、だからじゃないのかな」と友人に話しかけるでもなく、つぶやいた。

第二の発言/土曜日・夜
その友人と別れた後、別の友人にあった。消防士を目指しているその友人は、最近、寮に入りながら、消防士の訓練とそれに関する知識を学んでいる。先程まで一緒にいた友人の話しをしながら、話題はやはりあの事件の話しになった。私自身、あの事件を胸の中に押しこめているのが辛い状態だったというのも、もちろんある。私の頭には、線路にポツポツと残されていたピンクの肉片がどうしてもはなれなかった。
「人間の肉も鶏肉も挽肉も同じだから、嫌になるね」
それは私が最初に肉片を見た時の感想だった。なんだか肉片がまな板の上で見る食材のようにきれいで、やりきれなかった。きっと思い悩んで何かを苦に思って特急電車に身をなげたのに、あんなにも体の中につまっていたものはきれいで、まさか本人もそうは思わなかっただろうと考えると、切なくてならなかった。
すると、私の気圧された言葉に友人は「そうだよ」とだけ言った。
その顔がとても何か確信を持っているようで、私はその友人の顔には一生追いつけないと感じた。

第三の生活風景/月曜日・夕方
あの事件から2日が経ち、五反田で私は暇を持て余していた。時間は午後16:30。家に帰るには少し癪に障る時間だった。なので、私は献血に行くことにした。個人的に献血ルームと言うところが、大好きだ。なんてったって、御菓子は食い放題、飲み物も飲み放題、しかもだらだらできる。また、私には暇な時間がたっぷりあり、なおかつ、本の持ち合わせもあった。なので、私は始めて成分献血をしてみることにした。
成分献血というのは血小板や血漿だけを取る献血で、一度、血を採るにしてもそこから必要な成分だけを取り、残りの赤血球などは体に返してくれる。だから、貧血が起こりにくい。ただ、成分献血は一度、血液を機械に通し、遠心分離をかける手間があるので、時間が少しかかる。
成分献血の間、本を読みながら私は横にある機械の動く様を見ていた。機械は全自動で、看護婦さんが最初にちょちょいと操作すると、私から勝手に血を抜き、遠心分離をかけ、体に戻してくれる。シュゴーシュゴーと腕に巻かれた圧迫部分から空気が抜ける音が規則的に鳴っていた。機械の横には、ビニールのような素材でできた袋がかけられ、そこに尿のような色の血小板が集められていくのが見えた。
成分献血が始めてだった私は、その量に少し驚いた。おそらく500mlくらいはあったと思う。自分の血の中から、ある一種の成分だけでもこんなにもあるんだ、と感心した。そして、私は自分が何をしなくても体だけは勝手に生命を維持しようといることが驚きだった。こうして毎日のように、誰かを助けられる成分が作られている、そんなことが私が生きなければならない理由にも思えた。

第四の結論/月曜日・夜
成分献血が終わり、休憩所で、目的の御菓子やら飲み物やらをせしめていると、係りの人がやってきて、ねぎらいの言葉をかけてくれた。
「本日はありがとうございました。さて、今日、頂いた血小板ですが、さっそく明日、癌の患者さんに投与されると思います。ありがとうございました」
せんべいをまさに口いっぱいにいれていた私は、もほもほしながら「いえいえ」
とか「ありがとうございます」とかわけのわからないことを話す。明日、癌の患者さんに使われるのかあ、良かったあ、献血しといてなどと最初、穏やかな気持ちで考えていたけれど、私はふと気付いた。

え?明日?
今日とったものが明日にでも使われる?
おや?
血液の貯蔵、少なくね?

やばいよ、やばいって。血液の貯蔵、少なすぎ!
みんな、やばいって!血を献上すると書いて「献血」!
してあげて!

※献血ルーム豆情報
池袋の新しい献血ルームでは、手相サービスもあるらしい。



2003年11月24日(月)
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