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■ チクビと、そのアニキ。
「乳首」とは、私の会社の気持ちの悪い23歳男子のことである。要するに、「乳首」はあだ名。しかも、私がつけたあだ名で、会社で私がこれを口にするときは、ひとりぽっちになったとき。「きもいぞ、ちくび!」「よってくんな、乳首!」と罵声を小声で話すときにしか用いられない。この「乳首」、兄と一緒に会社に勤めている。しかも、同じ部署。「乳首」と「兄」は年が随分と離れている。乳首は冒頭紹介した通り、23歳。アニキは31歳。乳首曰く、「子供の頃は、あの人は誰だろうと思っていた。母親に“たまに来るあの人、だれ?”と聞いたこともある」のだそうだ。計算してみれば、乳首が幼稚園のときにアニキは既に社会人になっていよう年頃で、確かに「乳首」の言い分もよくわかる。 乳首とその兄が、入社したのはごく最近のことで、もちろん最初は兄弟なんて思ってもみなかった。顔が似ているとか、声が似ているとか、性格の類似とか、そんな点は微塵も見出すことはできなかった。あの兄弟は本当に似ていない。だいたい、弟である乳首を始めてみた時、私はかれを29歳くらい、兄の方を26歳と踏んでいた。ハッキリ言ってしまうと、乳首は見た目がダサイを通り越してキモイ。性格もネチネチとしている点がうかがえる。しかし、兄は違う。お洒落なTシャツをさらりと着こなす気の良い「あんちゃん」だ。兄弟と知らされた時、まだ二人とあまり接していないから、こうも兄弟としての違和感がある、と私は思った。そのうち、つきあっていくうちに二人を兄弟としてわかってくる時がくるんじゃないかと考えたのだ。別段、そんなことどうでも良いことのように思えるが、あの兄弟の違いには興味を持たざるを得ない。 二人と接するようになって1ヶ月あまり。未だに溝は埋まらない。埋まらないどころか、深まるばかりだ。まわりの人もきっとそう感じているに違いないと思う。気の良い「あんちゃん」として人気のある兄と陰気でヒョロヒョロしている弟。乳首が兄と話をしているところによく遭遇する。乳首は兄とこんなにも長い時間を過ごすことは初めてのはずだ。乳首は自分の兄を改めてどう思っているのだろう。誇らしいと思っているのか、それともそうではないのか。 この間、乳首に頼みごとをした。彼のアニキに渡して欲しいと仕事でつかう用具を渡した。「あなたのお兄さんのところに持っていって。」「え?アニキ?ああ、俺の心の中のアニキかもしれない」。その時は、なんだか腹がたって「ハァ!?」と思いっきり突き放してしまったが、なにか考えることでもあったのだろうか。なんにせよ、乳首はキモイ。アニキは良い人。それに変わりはしない。出来すぎたアニキのいる自分を恨むのも誇るのも本人の自由。けれど、一個人として言わせてもらえば、少しくらいはアニキを見習った方が良いんじゃないかな。
2003年06月11日(水)
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