スナックおのれ
毛。



 アダルトビデオの一角は、麻薬の色。

夜になって涼しくなった。そろそろ秋が来る。いや、もう来ているはずだが、やっぱり都会では季節の雰囲気があいまいなのか。特に冬や夏ではないあまり主張のない中間の季節を感じにくいように思う。だが、春はまだいい。都会の公園や川の傍、そして学校にはたくさんの桜が植えてあり、陽気云々ではなく、色で季節を知らせてくれる。もしかしたら、春の都会に多いヤバイ人たちは、色にやられているのかもしれない。人は緑が日常生活のどこかにないと、少しイカれてしまうらしい。だから、日常に緑が欠けると家に少しの緑を導入し、あらがっているのではないだろうか。しかし、都会の春は新緑よりも、桜のピンクに染まる。ピンクは、人工でも特殊な色だ。

昔、女友達とたわむれにビデオ屋をぶらぶらしていた時のこと。お互い何を見るわけでもないのに、ビデオのパッケージを見て、なんとなく話題に窮し、気付くと単独行動をとっていた。そのビデオ屋は1DKくらいの大きさで、ビデオ屋にしては小さなものだった。ふと近くにいたはずの友人がいないことに気付くと、躊躇もなく友人がアダルトビデオコーナーに入っていくのが見えた。どこのビデオ屋でもそうだと思うが、アダルトビデオがおいてある一角は、他のコーナーからは遮断されてつくられている。そのビデオ屋も例に漏れず、棚で袋小路を作り、アダルトビデオを陳列するという方法を取っていた。彼女は、そこに迷いなく入っていく。名前を呼ぼうとするが、既に時遅し。彼女の足はまっすぐにそちらへと向かい、私から見えた中にいる客が明らかに驚いている様が見える。すると彼女は、やっと気付いたのか、きびすを返し、こちらに戻ってきて、こう言ったのだ。「ピンク」。

私はピンクが麻薬の色だと思う。ピンクを前面に押し出しているところは、サンリオショップかアダルトビデオの一角ぐらいのものだ。そこで、子供はリボン付きの猫に見入られ、大人は女の肌に魅了される。ここで私はひとつの実験の提案をする。アダルトビデオの一角またはサンリオショップに24時間監禁。たぶん、都会の春と同じような現象が少なからず見られるのではないかと思う。

2002年09月12日(木)
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