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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■旧オフィス最終日
ゴールデンウィーク明けに会社がビルを引っ越す。
今のオフィスは、大地震が起こったら倒壊の恐れがある、と香ばしい理由。
移転先のオフィスは、高層タワー。
オフィスエリアの最高層階。
テロリストが飛行機で特攻するには、最高のロケーションにある。

ゴールデンウィーク明けからは、新しいオフィス。
新しいオフィスの自分の座席は最も眺望が良いであろう、と思われる最高の場所を確保。
自分のプロジェクトチーム用にプロクジェクトルームも確保。

コンサルティングファームには固定席はない。
座席は予約制である。
僕は長期的に座席を予約しているので、事実上は固定席ではあるけれど、システム上は、専用の場所はない。

引越し前の最後の夜のオフィスには、社員はもう誰もいない。
ゴールデンウィーク前の夜に、残業しているバカは僕一人。

引越し業者さんは既にオフィスの解体作業に入っている。
僕のブースを残して、どんどんと解体されていく。
工事現場だ。
「あと10分でLANに接続できなくなります」
「構いません。AirH"で繋ぎます」

僕の仕事道具一式は既に運送業者さんに渡ってしまっているので、カバンに入っている機材が僕に残された仕事道具。
2台のPCと200GBのHDD。
2台のPCと200GBのHDDを持ち歩いている時点でバカだ。
加えて僕は、有線、無線LAN、AirH"、FOMA、PDC、衛星チューナーといった通信手段も持ち歩いている。
オフィスが工事現場と化していようと、公園だろうと仕事にほとんど影響はない。

ゴールデンウィークは、しっかりと休みたいので、休暇前にできる仕事は全て完了させておくための残業。
と、いいつつ僕は完全モバイラーなので、どこにいても仕事は通常どおり。
ネットに接続できる場所にいる限り、僕の身体は地球上のどこにいても影響は少ない。
ネット接続環境よりも電源確保のほうが問題だ。
徹底的に機材を軽量化しているにもかかわらず、僕はバッテリーの予備をいくつも持ち歩いている。
燃料電池が欲しい。

オフィスは既に工事現場と化しているので、iPodで耳を塞ぐ。
ドリルの音に負けないようにボリュームを上げる。

冷静に考えると、LANに接続できないオフィスでAirH"でつないで仕事をするよりも、ブロードバンド接続が可能な自宅のほうが効率が良いことに気づいた。
ネット環境や機材に関しては、オフィスよりも自宅のほうが充実している。
ペーパーレスな僕にとっては、オフィスには紙の資料はほとんどない。
本も自宅のほうが多い。

僕はネットを使って、やりとりをしているスタッフに「メシでも食わね?」とメッセージを送った。
「すいません、今、バルセロナにいます・・・」
何だ、日本国内にいなかったのか。
携帯が留守電だったのは、そのせいか。
仕事はできても、物理的身体がなければ一緒にメシは食えない。

物理的身体がどこにあってもコラボレーションして仕事ができてしまう。
とんでもない仕事スタイルだ。

オフィスの引越し作業の工事を見ながら、オフィスって何なのだろう、とフト思った。
名刺に書かれた都内の一等地の住所表示、高層タワーの最上階という記号性。
ささやかな会社に対する帰属意識の象徴。
物理的身体を使ったコミュニケーションの場。
物置。
ネット化された仕事スタイルの僕にとって、オフィスの持つ意味あいは、大きく変わりつつある。

でも、本音ではオフィスは、ダサい場所にあろうと狭かろうとボロかろうと、何だっていい。
いるべき場所にいつもいるべき人がいる。
自分にもナワバリとしての居場所がある。
そういう人の本能に近いことが大切だ。
僕はゴールデンウィーク明けに、超効率化された最先端オフィスてはあるものの、人の動物的本能を省みないオフィスに引っ越す。
新オフィスでは、コンサルタントの固定席は完全に排除される。
ナワバリは消える。
僕は例外だけど。

プロジェクト単位でメンバーが構成され、数ヶ月単位で召集、解散を繰り返す僕たちは、帰属意識を消失しがちだ。

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04月28日(木)
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