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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■ゲーム脳コンサルタント
こんな事を書くとマジメなコンサルタントの人からは叱られるのだけれど、戦略コンサルティングは「ゲーム」である。
ゲーム理論の話ではない。
いわゆる普通のプレステなどのゲーム。

ゲームの世界では、世界はデフォルメされ、その世界のなかでだけ通用するルールのなかで行なわれる。
閉じた世界だ。
僕は、戦略コンサルティングの世界はゲームの世界と非常に近いのではないか、と思う。

戦略コンサルティングは、主に経営戦略を扱う。
フィーがクソ高いせいで、基本的にクライアントは大企業しかいない。
扱う案件も経営戦略であり、業務系の改革ではない。
業務改革やらCRMやらSCMといった現場に近い案件やシステム寄りの案件もコンサルティングファームには持ち込まれるのだけれど、僕は一度も経験した事がない。
戦略コンサルティング一般、そのなかでも僕個人に限って言えば、現場からは恐ろしく遠い仕事が多い。
事件は現場どころか脳内で起きているのである。
「僕の戦略策定」は脳内設定で、かつ妄想補完により行なわれる。
「ソースは?」
「脳内です」
僕自身は中途採用コンサルタントなのでハズすことはほとんどないのだけれど、新卒でずっと現場感のない戦略コンサルティングを続けていれば、救いようのないとんでもないコンサルタントになってしまっていただろう。

大企業の戦略策定、となると扱う対象が巨大なので、リアル感は薄い。
リアルの企業、現場を完全に掌握できれば良いのだけれど、そんなことは不可能である。
市場や競合企業の捉え方もリアルに捉えすぎては収拾がつかなくなる。
どうしても、現実世界をデフォルメし、世界を閉じたものとして戦略策定を行なわざるを得ない。
複雑なものを複雑なまま捉える複雑系のようなアプローチもないわけではないけれど、戦略策定においては一般的ではないし、戦略の実行も困難である。
「複雑系風味デフォルメ味」あたりが実効限界。

現実のコンサルティング業務においては、現場感とデフォルメされた企業、市場、競合の間を行き来する。
高い目線と低い目線を行ったり来たり。
鳥の目になったり、虫の目になったり。

だが、最終的な戦略は、高い目線でまとめ上げられる事になる。
高い目線で戦略を策定するためには、ノイズを排除し、現実世界をデフォルメすることになる。
「結局、つまりは、一言で言っちゃえばこういう事です」
数千万円かけて作られた戦略であっても、結果は30秒以内に説明可能である。
戦略は、エレベータートークで説明可能でなくてはならない。

そういう仕事を長く続けていると、日常の思考もデフォルメされたものに偏っていく。
複雑怪奇な世の中を閉じたゲームのようにデフォルメして捉えるような思考回路が定着してしまう。
「えっ?なんで?ロジックが破綻してるじゃん。そんなのデートを断る理由になってないじゃん。きちんと説明してよ」
「本日の合コンの目的は3つ。まずは・・・」
「あのさあ、何で10分も待ち合わせに遅刻してくる訳?僕の10分のフィーを知ってる?」
現実世界ではやっていけない。
そうやって、皆さん破局していく。

完全なゲーム脳である。

一方で戦略コンサルティングはゲームである、と開き直ってしまえば、仕事はお気楽である。
新しい案件は、新しいゲームをもらうようなもの。
お金までもらえる。
本屋に行けば、攻略本もたくさんある。
ネットにも攻略法はたくさん落ちている。
攻略法が見つからなければ、攻略法を知っている人を探せばいいだけ。
で、ちょっとだけ自分でも考える。
プロポーザルを書きつつ、今回はイージーモードだとつまらないので、ちょっとハードモードで行ってみようかな、とか。
テーマに飽きてきたので、やりこみ要素を加えてみようかな、とか。
僕の道楽につきあわされるスタッフは、ベリーハードモードだったりもするのだけれど。

戦略コンサルティングの仕事は、ゲームと非常に似通っている。
必然的に戦略コンサルタントの適性とゲーマーの資質は似てしまう。
正しくはゲーマー兼ゲーム制作者だけど。

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04月27日(水)
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