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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■グローバルマーケットと日本マーケットの乖離 〜携帯電話編
最近思う。
テクノロジー領域において、グローバルマーケットと日本マーケットの乖離が進行しつつあるのではないかな、と。
コンピュータ業界は、ハードウエア、ソフトウエア、サービス領域の全てにおいて、完全にグローバル化が定着した。
逆に言えば、日本は完全に敗退した、ということでもあるのだけれど。
だが、携帯電話、デジタル家電領域では、グローバルマーケットと日本マーケットが乖離しつつあるように見える。
もともと、日本は独自文化の強い国だ。
だけど、ここ何年かの間、世界のありとあらゆる文化は「米国スタンダード」を「グローバルスタンダード」と置き換えて均質化してきたかに見える。
ビジネスの世界でも、完全にグローバル化(米国化)が浸透している。
いささか、浸透しすぎた感もある。
ところが、ここに来て、あれれれれ?と思うことが多くなってきた。
携帯電話とデジタル家電領域におけるグローバルマーケットと日本マーケットがどんどん乖離してきているような気がするのである。
日本のマーケットが特殊化しつつあるように見える。
まず、携帯電話に関して。
世界の携帯電話マーケットは、大きく分けると3つである。
「米国」、「EU+その他」、そして「日本」。
2Gの技術で、おおざっぱに分けると、「CDMA」、「GSM」、「PDC」だ。
3Gが中心になると、基本的に世界はほぼ同じになる「はず」なのだけれど、2Gの時代に作られてしまった事業構造が日本と日本以外の地域では根本的に異なる。
2Gで日本以外の地域は、SIMカードを採用し、携帯電話事業のネットワーク、プラットフォーム、端末を分離した。
それに対し、日本では携帯電話キャリアが、ネットワーク、プラットフォーム、端末までの全てを支配する垂直統合モデルを採用した。
日本以外の国では、携帯電話キャリアは、あくまでもネットワーク事業者。
端末メーカーは、端末メーカー。
それぞれが独立して事業を行っている。
日本は、携帯電話キャリアが携帯電話事業の全てのバリューチェーンを握っているため、携帯電話キャリアだけの判断で、ネットワーク、プラットフォーム、端末を連携させた高度なビジネスを迅速に展開できることになった。
それに対し、日本以外の地域では、ネットワーク、プラットフォーム、端末はそれぞれ別の企業が担当するため、それぞれが緊密に連携した進化は難しくなった。
結果として、日本の携帯電話文化は、恐るべき速度で独自の異常進化を遂げることとなった。
日本はキーボード文化の国ではない。
多くの日本人にとって、最初に触るデジタルデバイスの入力機器は、PCのキーボードではなく、携帯電話のキーボードだった。
日本以外の地域においては、「PCから携帯電話」だったのに対し、日本では「携帯からPC」である。
携帯電話、先にありき。
日本におけるインターネットは携帯電話を中心に、独自に進化していった。
携帯電話は、話すためツールから、電子メールになり、ウェブブラウザになり、ゲーム機になり、音楽再生ツールになり、サイフになり、テレビになり、鍵になり。
日本人の好みに合わせて、恐るべく速度で、独自進化を遂げてきた。
これほど高速で親指を使ってメールを打てる国民、携帯電話をカメラとして常用している国は珍しいだろう。
結果として、日本と日本以外の携帯電話マーケットは、どんどんと乖離していった。
アプリケーションだけではなく、ユーザーインターフェイス、利用方法もどんどんと乖離していく。
主要な端末メーカーも日本と日本以外の国では、全く異なる。
グローバルマーケットVS日本マーケット。
60億人 VS 1億人。
日本の端末メーカーは、日本で培った技術やアイディアをグローバルに展開できないでいる。
ひとつには、日本の携帯電話端末そのものが日本人の好みに合わせて独自進化してしまったことであり、もうひとつは、日本の携帯電話上のアプリケーションが、キャリアが独自に提供するネットワーク、プラットフォーム、端末に大きく依存し、それぞれが緊密に連携しているからである。
日本は、高度に進化した携帯電話文化を持ちつつ、海外に展開することが難しい。
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02月05日(土)
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