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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■グローバルマーケットと日本マーケットの乖離 〜デジタル家電編
昨日の携帯電話編に続いてデジタル家電編。
日本の携帯電話マーケットがグローバルからどんどん乖離しつつあることを昨日書いた。
デジタル家電も携帯電話とは理由も構造も全く異なるのだけれど、日本独自の進化の方向性を見せ始めている。
日本のデジタル家電が日本独自の路線を走りはじめたのは、日本の特性によるものではない。
日本の家電メーカーの「意図的な戦略」によるものである。
デジタル家電には、アホほどたくさんの規格や連合が存在する。
で、それぞれの規格や連合に賛同している企業を整理してみる。
すると、あることがわかる。
「家電連合(日本)」 VS 「PC連合(米国)」。
デジタル家電分野において、家電メーカー同士は連合を組んでいる。
ソニー、松下、東芝、シャープなどの日本の家電メーカーは、デジタル家電の分野においては、敵対関係ではなく、連合を組んでいるのである(HD-DVD、ブルーレイを除く)。
このような抗争の構図ができあがっている理由をとりあえず3つ挙げてみる。
@垂直統合と水平統合のせめぎ合い
Aマイクロソフト帝国からの離脱
BDRM(Digital Rights Management )による囲い込み
@垂直統合と水平統合のせめぎ合い
かつての家電業界の構造は、垂直統合モデルであった。
製品開発、部品製造、完成品製造、物流、販売網、アフターサービスを一社のなかで完結させていた。
その垂直構造モデルなかで、いち早くつぶれたのは、物流、販売、アフターサービス。
大昔の家電メーカーは、製品製造だけではなく「ナショナルのお店」に見られるように、自社で販売、アフターサービス網まで保有していたのである。
もう何十年も前にダイエーが家電製品販売を始めた頃からこの垂直統合はくずれはじめ、現在では、ビック、ヨドバシ、コジマ、ヤマダ辺りの量販店にとどめを刺されてしまった。
そして、家電がアナログからデジタルに移行するにあたって、製品そのものの垂直統合モデルまで崩壊した。
デジタル家電はPCと同じく、ハードウエア的には汎用部品の寄せ集めである。
例えば、DVD/HDDレコーダーを見てみよう。
DVDドライブがついてて、HDDがついてて、イーサネットがついてて。
PCとどこが違う?
OSもLinuxだ。
箱を開けて覗いてみれば、チップ類も多くは専用品ではなく、中国、台湾、韓国製の汎用品だ。
製品の組み立ても中国の提携企業。
家電メーカーは「製品企画」、「マーケティング」を行い、自社ブランドのロゴをつけて売っている。
自社のもつ付加価値は下がる一方。
それに対し、各家電メーカーはしばらく前から「ブラックボックス化」を念仏のように唱え始めた。
もっとも重要と思われるコア部品のみを自社で開発、製造し、その技術を「ブラックボックス化」して、最後の砦を守ろう、という戦略である。
コア技術を「ブラックボックス化」し、そのコア技術により「水平統合」を目指す、というものである。
だが、それも現実には、一定の成果は収めてはいるものの残念ながら成功しているとは言い難い。
日本の家電メーカーが単独で、独占的かつ画期的な「ブラックボックス技術」を開発し、展開できるだけのチカラを保有しているわけではないからだ。
「ブラックボックス技術」は、現実には「ちょっとだけ高付加価値な部品」となってしまっており、技術の陳腐化も早い。
これから市場が本格的に離陸、というところで、早くも脱落企業が続出しているPDPパネル、液晶パネルは良い例だ。
これは、デジタル家電の事業構造がコンピュータ業界の事業構造と全く同じになってしまったことを意味する。
主要部品が、汎用パーツとなってしまった今、汎用パーツで構成された製品は付加価値が存在しないので、価格の下落が激しい。
製品ライフサイクルもどんどん短くなる一方で、旧型モデルの在庫ばかりが積み上がる。
生き残り策は、サプライチェーンの合理化のみか?
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02月06日(日)
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