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斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
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■ユビキタス時代に向けた日本のインターネットインフラ改革
僕は日米欧のインターネットトラフィックの動きを米国、ヨーロッパの外人と組んで、調査分析したことがある。
日米欧のインターネットインフラ、インターネット上のトラフィックがどこをどのように辿っているかをトレースして分析した。
実際にトラフィックを流し、トレースしていった。
IPアドレスをトレースしていけば、トラフィックの流れは簡単につかめる。
IPアドレスがわかれば、アドレスの保有者、住所まで特定できる。
どこのデータセンターに各サイトのサーバーが置かれているか、もわかる。
トレースデータを集計、分析、マッピングすることによって、日米欧トラフィックが明らかになった。
そこでわかったのは日本のインターネットインフラの特殊性である。
日本のインターネットトラフィックの大半はいちいち東京を経由しているのである。
インターネットのトラフィックは、IX(Internet eXchange)と呼ばれる結節点を経由して流れる。
IXは、インターネットインフラにおけるハブである。
欧米のIXは地理的に分散して置かれている。
それに対し、日本の場合、IXは一部地域に集中して置かれている。
日本のインターネットトラフィックの大半は一旦東京のIXを経由する。
イメージ的には東京を中心としたスター型のネットワーク構造に近い。
東京の場合、IXが置かれているのは、都内の3地域(公知情報ではありますが、3地域がどこなのかは書きません)である。
日本のインターネットインフラの中心のほとんどはこの3地域に集中している。
この3地域が地震やテロで崩壊した場合、日本のインターネットは壊滅する。
各プロバイダ間の接続は特定のビルのなかで行われている。
3地域の特定のビル内に全てのプロバイダがサーバーを置いている。
各プロバイダ間は同じビルの中でギガビットイーサで接続されている。
日本の場合、たった3つのビル内にインターネットインフラの大半が集中している。
これは、有事を考えた場合、とても安全だとは言えない。
この3つのビルがどこを指すのかは、通信業界に詳しい人であれば、すぐにピンとくるだろう。
現在のデータセンターのサーバーに置かれているコンテンツにアクセスする「放送型」に近いインターネットの利用法であれば、AkamaiのようなCDS(Contents Delivery Service)で対応することができる。
CDSとはコンテンツのコピーを世界中に点在するコンテンツデリバリーサーバーに分散させることにより、無用なトラフィックを増やさないようにするサービスである。
ダイナミックに生成されるコンテンツには対応できないが、スタティックなコンテンツであれば、効果が大きい。
コンテンツの各デリバリーサーバーへのコピーには衛星回線を使う。
IP電話は、IP電話事業者がインターネットとは別に独自回線を確保することにより、帯域が保証されている。
各プロバイダのVOD(Video On Demand)サービスはインターネット経由ではなく、プロバイダのクローズドネットワーク内(Walled Garden)で提供されている。
インターネットのトラフィックを無駄に使わないため、帯域を保証するためである。
だが、これからはユビキタス化に伴い、ユーザー間のP2P接続のトラフィックが増えていく。
トラフィック増大に拍車をかけている、と問題になっているWinnyのようなP2P接続だけではない。
自宅サーバー経由での放送視聴、ネット家電のコントロール。
RFIDタグやセンサーネットワークの普及による小さなパケットの増大。
ユビキタス環境下においては、RFIDタグやセンサーからのアクセスが累増していく。
パケットそのものは、RFIDのID情報であったり、センサーからのセンシング情報なので、小さいが、頻繁にパケットが流れるようになるので、パケットの総量はとてつもなく多くなる。
これらのP2P、及びユビキタス関連のパケットは、中央のサーバーを経由する必要がない。
東京のIXを経由する必然性もない。
今後は、コンテンツサーバーを必要としないP2P接続がインターネットトラフィックの多くを占めるようになる。
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10月12日(火)
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