ID:99799
斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
by オクノ総研
[1220796hit]

■ハイブリッドTV放送に関する整理
僕は以前からTV放送の将来像について勝手なことを何度も書いているのだけれど、この辺でちょっと整理しておきたいと思う。

地上波デジタル放送が今秋から実験放送を始めるが、地上にせこせことアンテナを立てるような地上波デジタル放送はテクノロジー面からもビジネス面からも必然性はない。
地上波デジタル放送は、地方局と在京キー局からなる日本の放送の枠組みを崩して混乱させないためのつなぎの放送手段にすぎない。
インフラを作ってしまった都合上、10年や20年は使うのだろうけれど、いずれは消滅する。

TV放送の将来像に影響を与えるであろう要素を整理したい。
法律やビジネスは後からついてくるので、テクノロジーを中心に整理する。
今の世の中を決めるのはテクノロジーである。
はじめにテクノロジーありき。
テクノロジーの進化が全てに先行する。

将来のTV放送に必要な要素は下記の3点である。

@衛星
Aブロードバンド
BHDD

基本的な要素はこれだけ。
将来のTV放送はこの3つが組み合わさったものになる。
目新しくも何ともない。
他にも要素はあるけれど、面倒だし、本質的にはどうでも良いことなので無視する。
この3つの要素だけに注目していれば良い。

@衛星
同じコンテンツを一斉に配信する場合、最も経済的効率の良い方式が衛星である。
空にひとつの衛星があれば、日本全国を対象に放送電波を送信することができる。
CS/BSデジタルは惨憺たる有り様だけれど、テクノロジーとしては最も経済効率が良いのである。

Aブロードバンド
同一コンテンツの一斉配信ではなく、ユーザーに個別のコンテンツを送信する場合に必要となるのが、ブロードバンドインフラである。
通常のTV放送をブロードバンドで流す、みたいな議論があるが、一斉配信にブロードバンドインフラを使用するのは経済効率が悪い。
あくまでも、ユーザー個別のニッチコンテンツやオンデマンドのコンテンツを流すためのインフラである。
また、コマース等のインタラクティブ放送にも使用する。

BHDD
急速な普及を見せるHDDビデオと同じ。
コンテンツを溜めておくために使用する。
ユーザーが見る、見ないを別にして、衛星からガンガンとHDDにコンテンツを送信し、溜め込む。
HDDの容量が足りない場合はユーザーが溜め込みたいコンテンツを選択受信しても良いかも知れない。
だが、HDDの容量の増加とコスト低下の速度を考えれば、近い将来、TSUTAYAの全DVDをHDDに保存することができるようになるだろう。
ユーザーはいわゆる「タイムシフト」でHDDのコンテンツを見る。
ニュース等のリアルタイム性が問われるコンテンツはHDDから見るワケにいかないが、ドラマや映画であれば、いつ見ても同じはずである。

将来のTV放送はこの3つの要素が組み合わさったものとなる。
リアルタイム性に関係のないコンテンツは衛星から降り注ぎ、HDDにどんどんと溜め込まれる。
映画やドラマのようなリアルタイム性を必要としない番組はHDD経由で見る。
衛星からHDDにコンテンツを流し込み、ユーザーが好きな時間にTV番組を見るようになれば、必然的にゴールデンタイム、という概念が消滅する。
深夜だろうと早朝だろうと24時間、HDDに対してコンテンツを送信し続ければ良い。
電波を使用する時間、電波利用効率は最適化されるはずだ。

リアルタイム性が必要なコンテンツ、ユーザーがオンデマンドで必要とするニッチコンテンツ、インタラクティブ性が必要な場合の上りの通信にはブロードバンドを使用する。
リアルタイム性が必要であっても、ニュースや天気予報等の「マス」が必要とするような情報は衛星から送信される。
衛星は全国区なので、特定の地域だけに必要なコンテンツはブロードバンドインフラを経由する。
地域に応じてCMを変える必要がある場合などは、衛星からは番組本体、CMはブロードバンドインフラ、といったハイブリッド放送になるのかも知れない。

TV放送の将来像はこの3つの要素のハイブリッド型になる、と僕は思っている。

[5]続きを読む

08月04日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る