ID:93827
脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
[794858hit]
■ パンがバターに化けるまで(中学生のドラマ脚本会議その1)
母校・堺市立三原台中学校での二日間にわたる「中学生のドラマ脚本会議」授業。その興奮がさめないうちに書き留めたいと思いながら、一週間近く経ってしまった。
少し記憶があやふやになっているところはあるけれど、まだ余韻は残っている。わたしが感じた手応えと熱気が、この日記を読む人にも届きますように。
きっかけは、昨年10月、母校で講演した折りに「中学生に脚本作りを教えたい」と校長の着本先生に話したことだった。「いつかやりたいですね」と遠い約束で終わってしまうところを、着本先生は「いつやりましょうか」とすかさず動いてくれ、3か月後に実現することになった。
さらに校長先生が教育委員会にも働きかけてくれたことで、堺市の教育センターの研修の一環として授業を行えることになった。
そこからは、校長先生と国語科の加藤先生とメール交換しながら、何をするか、どんな授業にするかを探っていった。
まず一日目にわたしが生徒向けに授業をして、それを見学した先生方と意見交換をする。また、先生向けの脚本教室もやる。それを踏まえて二日目に加藤先生が生徒向けに授業をした後に先生方と意見交換をする。そんな流れを決めた。
授業の内容は、役者のワークショップでやるような即興芝居をやってみようかとも思ったのだけど、短時間で脚本作りの醍醐味を味わえるように「原作からドラマを作る」ことにした。授業のタイトルを「脚本教室」ではなく「脚本会議」としたのは、実際の脚本開発の現場に近いブレストをやってみようと思ったから。
誰でも知っている古典的な話を現代風にアレンジするのがいいと思い、原作は「桃太郎」でやるつもりだった。ところが、一月半ばにOヘンリーの「Witches' Loaves」を原作にしたラジオドラマを聴いて、気が変わった。宅間孝行さんが出るので聴いたのだけど、起承転結が明快だし、恋の話だし、中学生にいじってもらうには打ってつけの素材! ほんと、ネタはどこに転がっているか、わからない。
早速amazonで調べて、読みやすいと高評価を得ていた千葉茂樹さん翻訳の魔女のパン (オー・ヘンリーショートストーリーセレクション 3)を取り寄せた。「魔女のパン」は原題の直訳だけど、宅間さんのラジオドラマでは「ミス・マーサのパン」というタイトルだったし、「善女のパン」という別名もあるらしい。
読んでみると、難しい漢字にはルビを振ってあるし、これなら中学一年生にもとっつきやすい。いい原作が見つかったことで、だいぶ気がラクになった。

ところで、著作権保持者の一人としては、授業で文学作品を取り上げる場合の著作権はどうなるのか気になるところ。調べてみると、学校教育においては、例外的に著作権の許諾なく使用や複製ができることになっているらしい。
というわけで、事前承諾なしに使わせていただいたが、とにかく読みやすいし、表題作品の他にも脚本会議の材料になりそうな短編が納められている。使わせていただいたお礼代わりに、この本を声を大にしておすすめしたい。
〈この「魔女のパン」を何度も読んでおいてください。頭で丸暗記する必要はありません。体にたたきこんでください〉と生徒あての手紙を添えて中学校に送った。
そうして迎えた脚本会議本番当日。
予定では生徒向けの授業をまずやるはずだったのが、インフルエンザによる学級閉鎖があり、「1日目に先生方と脚本会議、その後先生方向けに脚本教室と意見交換」「2日目の午前にわたしの脚本会議授業、午後に加藤先生の脚本会議授業、その後に意見交換」という流れに変更になった。
脚本会議に参加されたのは、三原台中学校の先生方と、堺市の教育センターによるリーダー研修の先生方、PTA新聞の取材の方、地元紙「泉北コミュニティ」の記者さん。校長先生が声をかけた、地元高校の演劇部の顧問の先生も。
[5]続きを読む
01月30日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る