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脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
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■ りんごで始まりアップルパイで実る恋(中学生のドラマ脚本会議その2)
母校・堺市立三原台中学校での「中学生のドラマ脚本会議」授業2日目。前日の大人組(1/30の日記)は先生方中心だったので活発な意見が出たけれど、中学生はどうなのか。
発想は大人より面白いものを持っているだろうけれど、それを口にするハードルが高そう。なので、先生方のアドバイスを受けて「近くの人と自由に相談していいよ」形式を取り、一人ずつ当てるのではなく、自発的に出た声を拾いに行くことにした。
9時45分から2限目の授業。生徒を教室に入れ、席に着かせるまでに5分近くかかる。残る45分でどこまで行けるか。「今井雅子さん?」と親しげに話しかけてきてくれた女の子たちは1組の子だった。
昨日入る予定だったNHKの取材は、授業に合わせて今日にずれた。テレビカメラを向けられて、教室は、ちょっとそわそわ。
地元紙「泉北コミュニティ」とPTA新聞の取材、他に見学の先生方が数名。
昨日と同じく、Oヘンリーの「Witches' Loaves」を千葉茂樹さんが翻訳した「魔女のパン」を原作に、脚本開発会議。

あらすじをおさらいすると。
パン屋のマーサは独身の四十女。2千ドルの預金と自分の店を持っている。
恋人はいないが、気になる客がいる。同い年ぐらいの紳士だ。
しかし、彼が決まって買っていくのは、マーサの自慢の焼きたてパンではなく、古くなって半額になったパンである。
彼の指先に絵の具がついているのに気づいたマーサは、彼が売れない絵描きで、貧乏だから、古いパンしか買えないのだと思う。
そのことを確かめるために、マーサが店に絵を飾ってみると、彼は絵をほめた上で「遠近法がなっていない」と指摘した。
彼は才能があるが芽が出ていないのだとマーサは思い、そんな彼を支えたい気持ちを募らせ、胸をときめかせる。
ある日、彼が店に来たとき、外で消防車のサイレンが鳴った。彼が外へ様子を見に行ったすきに、マーサは彼が買い求める古パンの間にバターを塗る。
絵描きのプライドを傷つけずに栄養のついたものを食べさせたいという想いからだった。
マーサの小さな親切に気づいた彼の反応が楽しみだった。
だが、マーサの夢想は、店に怒鳴り込んで来た彼の声で破られる。
一緒に来た彼の友人によると、彼は絵描きではなく、建築家の卵だった。
コンペに提出する設計図の下絵を消すために古パンを使っていたのだが、いよいよ完成というときに、バターのせいで台無しになってしまった。
マーサの短い恋は、終わった。
このお話、「恋をする」「盛り上がる」「行動を起こす」「ふられる」とキレイに起承転結の展開になっていて、要は「ヒロインが恋をしてからふられるまでのお話」と前置きした上で、キャラクター決めに取りかかった。
「ミス・マーサ40歳の恋愛ドラマ、見たい? 親しみやすく、大阪の女の人にしよか? 年も自由に決めていいよ」と問いかけると「20歳!」「25歳!」「30歳!」と声が上がった。
「20歳がいい人、拍手」
「25歳がいい人、拍手」
「30歳がいい人、拍手」
拍手採決方式、眠気覚ましにも有効。意外なことに「30歳」になった。

名前は「川村マサヨ」と「土橋マサキ」に。土橋は「38歳」。20代男女に設定した大人組よりもオトナな設定。
では早速、マサヨの恋バナを作っていこう。まずは、
恋をする
「原作では、気になる客がいるとこから始まってるけど、出会いの場面作ってみよか? どこに恋したんやろ?」と振ると、「店の前にむっちゃ長い坂があって、そこを果物が転がっていったのを拾ってあげた」と映像が目に浮かぶ具体的なアイデア。
「もうちょっと親切にしてみよか?」と誘導して、「紙袋からこぼれたりんごを拾ってあげて、ついでに紙袋も持ってあげる」と優しさ倍増。
土橋さんてステキ、とキュンとなったマサヨ。出会っていきなり「親切にしてもらったお礼に自慢のパンをサービス」というアイデアが出る。りんごでつなげて「アップルパイ」をプレゼントすることに。
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01月31日(火)
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