ID:93827
脚本家・今井雅子の日記
by いまいまさこ
[786483hit]
■ 上杉祥三さん作・演出『アセンション2012』
NHK-FMのラジオドラマFMシアター『夢の波間』で江戸の廻船問屋・茂右衛門を威勢良く演じてくれた上杉祥三さんとはその後も交流が続いていて、ちょくちょく舞台を拝見して、その後の飲み会をご一緒したりしていたのだけど、出産を機にしばらくご無沙汰していた。
ひさしぶりに舞台を観に行こうと思い立ったのは、上杉さんからと並行して出演者の一人、柳生照美さんからも案内があったから。照美さんは、『ぼくとママの黄色い自転車』に多大な応援をしてくれた小豆島の柳生好彦さん峰子さん夫妻の娘さん。瀬戸内国際こども映画祭の準備でも顔を合わせている。
早速小豆島に電話をすると、「またまたつながりましたね」と驚かれ、夫妻で東京まで観に来られるというので、ではご一緒させてくださいと申し出た。
縁ですねえと驚き合っていたのだけど、4年ぶりぐらいの上杉さんと再会して、また驚いた。照美さんが上杉さんの舞台に出演するからその父親である柳生さんとつながったとばかり思っていたのだけど、上杉さんと柳生さんは何年も前に知り合っているという。あるパーティへ向かうタクシーに同乗したときに、車内から柳生さんが電話をかけた相手が上杉さんの知り合いで、それがきっかけで親しくなったとか。その共通の知人というのが、今回の舞台のプロデュースに関わっているMOBAアカデミアの的場朱美さんで、的場さんとわたしは瀬戸内国際こども映画祭の準備でご一緒している。
というわけで、上杉さんの口癖の「シンクロニシティ」を持ち出されるまでもなく、なんだか不思議な縁を感じながら上演開始を待つ間、上杉さんを独り占めして創作秘話を聞かせていただく。タイトルにある「アセンション」さえ知らなかったわたしに、「アセンションいうのは次元上昇のことで、2012にハルマゲドンが起こって地球が滅びるいう説があって」と説明してくださる。「ノストラダムスの大予言みたいなもんですか」と聞いたら「それがほんまは2012年やったと主張する人もおって」。とまあ絶滅の危機に瀕した人類に警句を発する内容になっているという。
さらには「日本人とユダヤ人はルーツが同じっちゅう説があって」とさらにすごい話になり、被爆者の話もからんでくると聞いて、果たしてどんな舞台になるのやらとドキドキしながら着いた席は上杉さんの真ん前で、上杉さんの独り言や細かいリアクションを背中に浴びながらの鑑賞となった。
上杉さんの舞台で毎度感心するのは、膨大な資料から拾い上げたエッセンスを見事にストーリーに組み込み、言葉遊びや謎解きも盛り込んだ豊かな脚本に仕上げていること。今回も言葉遣いの面白さに目を見張った。「鏡(かがみ)から我(が)を抜くと神(かみ)になる」「雷は我は神なりと鳴る」といった言葉が印象に残る。
アセンションの謎とそれに打ち克つ答えに迫りながら登場人物たちが転々と旅を続ける展開は、リチャード・バックの『イリュージョン』やジェームズ レッドフィールドの『聖なる予言』、そしてダン・ブラウンの『ダヴィンチ・コード』を思い起こさせた。まさかそんな話あるわけないと疑いつつも、そういう見方もできるかもしれないと思わせるものがあり、今まで気づかなかった領域に目を向けさせるところも、これらの作品に似ている。
今回の舞台は去年の初演したものの再演らしいが、大幅に加筆したとのこと。また、伊勢神宮にも舞を奉納されているという浅野瑞穂さんが天女役で出演されているのも大きな違い。場の空気が変わるというより、まわりの空気も含めて舞の一部というような大きな波を感じさせる、まさに神懸かりな存在感だった。瑞穂さんと上杉さんをつなげたのは柳生さんで、小豆島のエンジェルロードで舞ったのだという。潮の満ち引きで現れ消える道での舞はさぞ幻想的だっただろうと想像する。
休憩を挟んで2時間あまりの熱演。照美さんは何役もこなし、はつらつとした姿を印象に焼き付けてくれた。観終えて、「魂は神様の御霊の分け前」であり、それに感謝する謙虚さを忘れるなというメッセージが強く残った。
上演後の上杉さんと京都の社長さんのトークがこれまた面白く、思わずメモを取ってしまった。くわしくは翌日のツイッターにて。
今日のtwitter
[5]続きを読む
01月08日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る