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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 日本の弦楽四重奏談 @ 巌本 真理・黒沼 俊夫 両氏をたずねて
人たちもいますがね(笑)
巌本 いろいろ版がありますでしょ アップダウンの記号でも第一ヴァ
イオリンと第二ヴァイオリンが逆になっていたりね(笑)かえって邪魔
になることの方が多いですね。
── 指示記号が多いのは向うではアマチュア演奏家の要求にこたえる
ためでしょうか
黒沼 いや むしろ版権の都合で無理に手を加えているのかもしれない
(笑)
── 初演ものの場合には まさに書きなぐりのままで演奏されること
が多いでしょうね
黒沼 符尾だらけですよ そういうのは
── 作曲家が立ちあって 練習の段階で急遽 書き直したりすること
もありますか
黒沼 立ちあうことはありますが オーケストラとちがって 4つの同
じ系統の楽器ですから それほど予想外の音にはなりませんね
── キング・レコードの日本の弦楽四重奏曲は文字どおり日本の代表
作を集めたものですが 録音に際してはどれくらい準備期間があったの
ですか
巌本 最初お話があって半年くらいだったですね
── レコードの場合は 演奏に当っての気負いのようなものは いく
ぶんちがってくるのですか
黒沼 それは異いますね たとえば迫力的な部分はいくら力んでみても
汚くなるだけだし生演奏だったら こんな弾きかたはとてもだめだとい
うようなことも やらなくてはならない 
── ヴォリュームを加減するようなこともあるのですか
黒沼 よほど特別の場合にはね
── むかしSP時代には 収録時間にあわせてテンポを急いだりした
そうですが
黒沼 そんなことはやりませんよ(笑)ぼくの考えでは 最近のレコー
ドは音響的にひじょうにいい状態で採ってあるから 高度な音楽ファン
は わざわざ演奏会まで出かけなくても充分満足してるんじゃないかな
── したがって常設のクワルテットも少ないし 採算に見合う大きな
ホールでは音響的に好ましくないわけですね ところで一般のアマチュ
アが そうした演奏会に出かける前にせめてこれだけは勉強しておかな 
くてはというようなことはありませんか
黒沼 さあ それはむずかしいですね まあ何となく聴きに来られて 
よかったらまた来ていただく(笑)とくに準備されることはないんじゃ
ないですか
巌本 テーマがどうとか 曲の成りたちがどうってことは かえって必
要ないと思いますね そんなことでクワルテットが敬遠される方が困り
ますね
(1969・7・12/音楽芸術協会にて)
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 月刊《アルペジオ》第5号は、十字屋主催の「巖本真理弦楽四重奏団
演奏会」特集号として、いわば実験的に急遽まとめた。十日前に東京で
対談、その他の連載も内容を変更する。→《双龍外伝》に詳述。
 黒岩氏が師事したチェリスト、ロマン・デュクソンの名は、三十年も
のちに戦前期の来日音楽家(1939)“ドゥクソン”の表記で発見したが、
生没年月日は未詳。
「巌本さんのがかなりいいんで」、おそらくアマティであろう。黒沼氏
のチェロは未詳だが、菅沼氏のヴィオラは、その父の製作になるという。
 演奏会が終ったあとの食事会は、この上もなく痛快な会話で弾んだ。
われながら少々はしゃぎすぎた反省もあるが、その夜のたのしい思い出
を記念して、次号の表紙を“君去りし後”と名づける。閉演後の無人の
ステージを、暗室作業で再現作画(撮影・土村清治、印画・清水治雄)。

 当日のアンコールは、バルトークのピアノ曲《ミクロコスモス》のう
ち、ティボール・シェルリーの編曲による弦楽四重奏のための五つの小
曲より、終曲“蝿の日記から”。

── 密集した位置で白鍵と黒鍵を二つの音部に分けて運動させるバル
トーク好みの曲想に、「蝿の日記」という面白い題名をつけたもので、
おそらく「ミクロコスモス」全曲中もっともポピュラーな曲であろう。
 〜 Bartok,Bela《Mikrokosmon,No.142》 〜 
── 柴田 南雄《名曲解説全集12 19651125 音楽之友社》P316-317

07月12日(土)
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