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与太郎文庫
by 与太郎
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■ 日本の弦楽四重奏談 @ 巌本 真理・黒沼 俊夫 両氏をたずねて
黒沼 巌本さんのがかなりいいんで あとはばらばらです
巌本 黒沼さんのチェロは有名なんでしょ
黒沼 有名なだけじゃいけないんで(笑)こればかりは今すぐどうにか
なるというわけにはいきませんね ピアノ・トリオなんかだと 奏法や
楽器よりも 名人が三人あつまればいいんですが
── 邦人作品の初演もいくつか手がけられておられますが それは前
衛芸術としての立場から意識的にとりあげていらっしゃるのですか
黒沼 いわゆる前衛作曲家たちは 四重奏をまず書いていないんですよ
実はひとつやりたい曲もあるんです
── こんどの京都公演のプログラムでは邦人ないし近代のものが聴け
るかと期待した人たちもいるのですが
黒沼 邦人作品などは 皆無といっていいくらい注文がありませんね
定期演奏会とちがって招かれて演る場合には だいたい主催者の意向に
あわせるわけですがね
── すると聴衆としては 番外のアンコールで聴きたいものを要求す
ることになりますね
黒沼 ひととおり終ったあとですから 気がらくになって いい結果に
なる場合もあるんです でも拍手があったらの話でね(笑)その時には
きっと面白いのをやりましょう (この項つづく)
── 第一ヴァイオリンが女性である例は欧米でもめずらしいのですか
黒沼 ないことはないですね ヨーロッパに4人とも女性のクワルテッ
トもあります
── 弦楽四重奏では 常に第一ヴァイオリンがリーダーとなるわけで
すか
黒沼 原則的にはそうですね そのように書かれたものがほとんどです
から
── いわゆる伝統的な書法で作曲されているから古くさいとはいえな
いし かといっていつまでもそれに負ぶさった作品も物足りなくなるの
ではないでしょうか
黒沼 それはそうです ただ新しいものの中には たしかに4人の奏者
のためには書いてあっても いわゆるクワルテットとして異質なものも
あります 旧来どおりの書法を中心にして まったく新しい手法も採用
するというペンデレッキーなどは いいと思いますね
── 演奏しておもしろい曲と 聴いておもしろいというのは別の問題
になりますか
巌本 そういうこともありますね とってもむずかしいところですけれ
ど
黒沼 たとえば とっつきが悪くても回数を重ねるうちにだんだんよく
なる というのがブラームスでしょうね それと逆に これはぼくの個
人的な意見だけれどもヒンデミットのように2,3回演るとつまらなく
なるのだってあります はじめはおもしろいんだけど
── すると聴く側としては はじめての曲であっても数回聴いたもの
でも たえず興味をもって臨みたいものですね
黒沼 知らない曲だから つまらないだろうという傾向は たしかにあ
りますね
── ある世代までの音楽ファンですと まずベートーヴェンから入っ
て ブラームスかワグナーあたりで一段落という道を通る人が多かった
わけですね ところが最近の若い世代ではいきなりブルックナーを聴い
て 平気でレコードを買っていく あんな長いものを(笑)と私は驚い
ているのですが そのあと先へ進むのか あるいはベートーヴェンにあ
ともどりするのか
黒沼 そこが分かれ目ですね でも結局はだんだんもどっていくんじゃ
ないですか 弦楽四重奏でいえば やはりベート−ヴェンが金字塔です
からね
── 彼はとくに弦楽器をよく知っていたという点でですか
黒沼 それよりも音楽そのものでしょうね
── たとえば彼のシンフォニーについては多くの指揮者が自分なりの
解釈と訂正をした譜面をもっているそうですが 巌本真理弦楽四重奏団
では楽譜はどのように選んでおられますか
黒沼 スラーもスタッカートも何もないのを主に使っています 楽譜っ
てのは もともと書きなぐりだったわけですよ こまかいことはでたら
めっていうか それほど重要じゃないんです 当時の音楽では演奏家に
まかされてもいたし 現在あきらかにこうすべきだという場合をふくめ
て 勝手にやっちゃうわけですね もっとも中に音そのものまで変える
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07月12日(土)
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