ID:85567
Kenの日記
by Ken
[99106hit]

■ザルツブルグ音楽祭の「トロバトーレ」
今年4月に放送されたザルツブルグ音楽祭「トロバトーレ」の後半を見終えました。後半ではネトレプコが扮するレオノーラの見せ場が多く、ネトレプコの演技・歌唱は他の歌手に比べて圧巻の出来だったと思います。4月の前半を見た時の感想と同じで、ネトレプコは身体は少しほっそりしたものの、声の深さと幅が増し大変な存在感を示しています。2014年のザルツブルグの祝祭劇場のオペラでは抜きん出て講評だったようです。

ならば、今年の夏のザルツブルグがどのようであったのかネットで調べてみると、何と再びネトレプコの「トロバトーレ」が演奏されていました。それも2014年演出そのままのようです。何故そうなっているのか知りたくて駅前の図書館の「音楽の友」を見に行きました。答えは単純で2014年に好評だった「トロバトーレ」が2015年にもそのままの演出で再演されたのでした。2014年のトロバトーレでネトレプコと並んで観客の注目を集めたドミンゴは2015年には出ていません。

その年に好評を博した演目を次の年に再演するというのは大変効率の良い集客法です。2014年のザルツブルグ版「トロバトーレ」はネトレプコの演技・歌唱で世界中のファンから注目を浴びました。2015年版は舞台セット・衣装そのままで再演されたようですし、出演料が最も高いと思われる「ドミンゴ」を他の歌手に入れ替えたのですかコストはかなり低く抑えられたはずです。

今回の「トロバトーレ再演」にはザルツブルグ市や音楽祭関係者の「危機感」が現れていると思われます。モーツアルトの出生地で嘗ての楽団帝王のカラヤンの出生地でもある「ザルツブルグ」は「音楽」を看板して全世界から観光客を集めてきました。カラヤンの「力」でウィーンフィル、ベルリンフィルの登場が当たり前となっていたので、世界最高峰のオペラ・オーケストラ公演を聴くために音楽ファンにとっては最高峰の音楽祭となっていました。

ところがそうした「世界最高峰」が少しずつ翳り始めていました。カラヤンの後任のアバドはルツェルン音楽祭を梃入れして「世界最高峰オーケストラ」のルツェルン祝祭管弦楽団を組織し自ら指揮台に登ってマーラー等の名演を残しました。サイモン・ラトルとベルリンフィルは2013年のザルツブルグイースター音楽祭出演を取り止め「バーデン・バーデン音楽祭」に移ってしまったのでした。後任のティーレマン・ドレスデンではこれまでのような集客力はありません。ザルツブルグの「ネトレプコたのみ」は暫く続くことでしょう。

そのネトレプコですがどうやら「トロバトーレのレオノーラ役」はオペラ界のスーパースターの座を確固とした記念碑的な重要なレパートリーとなったようです。勿論従来からの歌唱力に加えて「ダイエット」に成功しつつあることが大きく影響していて、ネトレプコが努力していることを聴衆が理解していることは需要なのですが。
以下は「ネトレプコ」ページで発表されているスケジュール等からの情報ですが、世界のオペラハウスがネトレプコを求めているようです。

ネトレプコの「トロバトーレ」の演奏実績・演奏予定

2013年12月 ベルリン国立歌劇場、ルーナ伯爵(ドミンゴ)
2014年 8月 ザルツブルク、ルーナ伯爵(ドミンゴ)
2015年 8月 ザルツブルグ(再演)、ルーナ伯爵(アルトゥール・ルシンスキ)
2015年10月 メトロポリタン歌劇場 ルーナ伯爵(ホロストフスキー)
2016年 1月 パリオペラ座
2016年 7月 ベルリン国立歌劇場、
2016年 3月 日本来日、リサイタル(参考)
10月11日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る