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Kenの日記
by Ken
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■「Beef Ban」
インド西部のマハラシュトラ州で「牛肉の販売・消費」を禁ずる法律が施行されたそうです。マハラシュトラ州では州議会が20年前に「the Maharashtra Animal Preservation (Amendment) Bill」で決議していたのですが、国会での承認・大統領の許可が保留されていたのだそうです。昨年10年振りに政権交代があって、ヒンドゥー教を大切にする「BJP」政権が発足し、国会でヒンドゥー教徒に歓迎されそうなこの法案に「Goサイン」が出されて3月3日に大統領が署名したということです。
マハラシュトラ州ではこれまで「Cows」の屠殺・販売・消費は禁止されていたそうですが、今回はこれに加えて「Bulls」も禁止種類に指定されるとのことです。但し水牛「Buffalos」の屠殺・販売・消費は許可されるようですが、その量は「牛」全体の25%程度に過ぎないので牛肉の流通量急激に減ることが予想されるのだそうです。この法律の罰則規定では法律を犯した者に高額の罰金や最長5年の禁固刑が適用されるとのことです。
マハラシュトラ州はインド金融の中心都市の「ムンバイ」を擁する非常に有力な州です。ここには外国の金融機関が進出しているし、インドの有力企業の本社が集中していて海外からの渡航者も多く国際都市と言えるのですが、だからこそこのようなヒンドゥー教寄りの法律が施行されるところが「ムンバイ」らしくもあるのです。
金融・商業都市のムンバイにはインド人の高学歴層が集中しています。表現が少し適切性を欠くかも知れませんが、高学歴の人々は上位カーストの方が多いのは否定できない現象です。ヒンドゥー教徒では上位カーストの人日とほど節制します。当然ですが「肉食・アルコール」の習慣は殆どありません。ヒンドゥー教徒でも上位カーストの人達ほど菜食主義者が多くなるのです。また会計士・弁護士のような職業は厳しい戒律を守り自己統制能力の高い「ジャイナ教徒」の人々が就くことがおおいようです。ジャイナ教はヒンドゥー教より徹底して「生き物」は食べません。国際金融都市ムンバイの産業を支えるのがこのような人々なので「BeefBan」の法律も無理も無いと思われるのです。
ムンバイに住んでいた頃は「牛肉」の調達にはひどく苦労しました。そもそもムンバイでは「牛・豚肉屋」は見かけることはありませんでした。市場には「チキン」は売っていますが「牛・豚」は売っていませんでした。どこで買うかというと特定の食料品屋さんの奥の方に大きな冷蔵庫があって、そこで他人の目に触れないような形で豚・牛肉の販売が行われていました。街の人に聞けばどこに売っているか直ぐに教えてくれますが、堂々と胸を張って買うような品物でないことは確かでした。当時はそれでも牛肉を買えましたが、これからは購入そのものが難しくなります。スケーキ大好きのアメリカ人などムンバイでは暮らしていけないでしょう。
ユダヤ教の「Kosher」、イスラム教の「Halal」程ではないようですが、インドのヒンドゥー教も自らの宗教のアイデンティティを全面に押し出す時代が来たように思えます。「セクハラ・パワハラ・アカハラ」など様々な「ハラスメント」が「宜しくない」とする時代に入りつつありますが、他人の「宗教」に関してハラスメントにならないような細心の配慮が求められるようになりそうです。
嘗て香港で仕事をしているインド人の知り合いと彼の祖国インドのムンバイの「菜食主義レストラン」で食事をしたことがありました。完全菜食主義の彼が非常に満足した様子で美味しそうに「完全ベジ料理」を食べている様子を垣間みることとなりました。多分彼は何でも食べてしまうような「香港料理」に非常に苦労していたのだと想像できました。
03月04日(水)
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