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Kenの日記
by Ken
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■「ISIS」とイスラエル
「後藤さん、湯川さん」が拘束された日本人人質事件が二人の死亡でひとつの節目を迎えました。イラン・シリア・ヨルダン・トルコなどを舞台にして慌ただしい年の初めの一ヶ月が過ぎましたが、この間、エジプト・イエメン・リビア等でイスラム過激派のゲリア攻勢が連続しました。これらの一連の攻撃の基本的な構図は「イスラム既成政権に対するイスラム反政府組織の攻撃」です。

奇異に思えるのは、中東問題の本質は「イスラエル対アラブ(イスラム教徒)」だと思っていたのですが、それは一体どうなってしまったのかということです。国連決議も反対しているイスラエルのパレスティナ入植活動は止むことがありません。イスラエルの地を追われて故郷に戻れないパレスチナ難民はパレスティナ国を建国しました。「ISIS」はこのパレスティナ国さえも既成政権として敵対しようとしているでしょうか。

アラブ諸国の既存政府(アメリカと同盟する国とした方が適切でしょうか)に反対する「ISIS」はイスラエルに対して今後どのように対処していくのでしょうか。ひとつのシナリオとして、まず「ISIS」は統治機構が崩れかかっている国を標的にして勢力地拡大を図っているため、強力な軍事力を有する「イスラエル」は「後回し」にしているとう仮説ができます。

この仮定からすると「トルコ」も「ISIS」の当面は対象外となります。「ISIS」がかなりの地域を支配下に入れ、中東に限らずアフリカ北部の国々、アフガニスタン・パキスタンの過激派を傘下に収めた後、最終の敵「イスラエル」・「トルコ」への攻撃を開始するというシナリオが考えられます。しかしこの仮説には現実離れした点があります。「ISIS」がイスラエルと何時か事を構えるつもりならば、「イスラエル」が「ISIS」の成長・領土拡張を黙認するはずがないということです。将来イスラエルの存立を脅かすかもしれない「ISIS」の成長は一定の段階で攻撃して弱体化させておかないと「イスラエル」自身が危なくなるのです。今のところ「イスラエル」は沈黙しています。

「ISIS」の声明文では「十字軍」と言う言葉が良く出てきます。考えてみるとアラブの地が十字軍に蹂躙された時代にアラブ中東地域には「イスラエル」はありませんでした。キリスト教徒の十字軍の攻撃相手は「イスラム教徒」であって、「ユダヤ教徒」はキリスト教徒・イスラム教徒の敵でも味方ありませんでした。現在イスラエルともめているのは「ガザ地区・パレスティナの地」でイスラエル建国のために移住を強いられた人々です。この人達と第一次世界大戦後に西側諸国(kリスト教徒)の支援を受けてアラブの地に成立した「王族政権」とは基本的に分けて考える必要があるのかも知れません。

この「イスラエル」と「十字軍」との関係はそのままアメリカ支配層内の「力関係」にダブってきます。つまりピューリタンの思想をバックに持つ比較的リベラルな支配層と、新大陸に移住したユダヤ人をバックにする非常に保守的な支配層です。イスラエルを支持するユダヤ人系に人々にとってはアラブイスラム既成政権に対する「反十字軍攻勢」は少し離れた「対岸の火事」なのかもしれません。ユダヤ人とアラブ人は民族的には非常に近く、欧米のキリスト教徒とアラブ人の「十字軍の恨み」的な対立構図を当てはめることはできないのかもしれません。
02月03日(火)
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