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Kenの日記
by Ken
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■シリアのクルド人組織
シリア北部でクルド人反政府組織が主要都市の「コバニ」をイスラム教過激派武装組織「ISIS」から奪還したというニュースがありました。先月の26日のことです。米軍が「ISIS」を空から攻撃し、陸上でクルド人部隊が勇猛に戦った結果このような戦果があがったようです。イラン・イラクなどのアラブ諸国が手を焼いている「ISIS」ですが、このクルド人部隊の成果は数少ない明るいニュースとして伝えられました。
しかし「ISIS」を押し返してしまう「シリアのクルド人組織」について少し調べてみると、それほど単純に喜んでいられない事態であることが分かってきました。
クルド人と呼ばれる人達は主に中東のトルコ・イラン・シリア・イラクの地域に住んでいる約3000万人の民族です。中東地域ではアラブ人、トルコ人、ペルシャ人の次に人口が多い民族なのだそうです。第一次大戦後の一時期「クルディスタン」として独立していた時期もあるのですが、二次世界大戦後はトルコ・アラブ諸国の国内で少数民族として暮らしてきたのでした。最大のクルド人社会を有するトルコではクルド人の分離独立運動がトルコの内政の課題となっているのです。クルド人は自分の祖国を持たない嘗ての「ユダヤ人」と似た環境に置かれているといえます。
そういう環境にあるからこそ勇猛なのかもしれませんが、もし「クルド人」がシリア・イラクで「ISIS」を駆逐したとすると、その後に想定されるのはトルコ南部のクルド人を含めた「クルド人国家建設」だとおもわれるのです。アメリカが描く「シリア」の将来像は、まず@「ISIS」の駆逐、Aアサド政権打倒、B穏健なアラ反政府勢力により政権樹立ということになりますが、Bの代わりに「クルド人国家建設」ということになるとマタ話が拗れてしまいます。
クルド人の多くは基本的には穏健なイスラム教徒(自由シリア軍が母体か)で中にはキリスト教徒やゾロアスター教徒等もいるようです。それもあってかクルド人兵士の中にはかなりの数の女性兵士もいるということなので「女性が活躍できる社会」のようです。しかしシリア・イラクのアラブ人とてを結んで上手く国を作っていくことが出来るかどうか。失敗するとイスラエルに追われたパレスチア難民のようなアラブ人がまた増えてしまう事になります。
トルコが「ISIS」攻撃に消極的なのも「クルド人組織」の勢力拡大を恐れるからです。アメリカとしては「穏健なイスラム勢力」によるアサド大統領打倒を想定しています。しかしこの一見穏健なイスラム組織が「ISIS」と敵対する「アルカイーダ」と結ぶ可能性は十分あります。更にクルド人勢力が制圧すればトルコを巻き込んだ別の紛争に発展するおそれがあります。「ISIS」掃討後のイラク・シリアの国の形は見えてきません。
02月04日(水)
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