ID:85567
Kenの日記
by Ken
[99134hit]
■来年1月にスリランカ大統領選挙
スリランカでは現職のラジャパクサ大統領が任期を二年残しての前倒しの大統領選挙を実施して「3期目」の続投を目指しています。この大統領の動きに対抗してラジャパクサ政権で保健大臣を務めていた「マイトリパーラ・シリセーナ(Maithripala Sirisena)氏」が政権から飛び出して、ラジャパクサ大統領の3選阻止のために立候補するのだそうです。このシリセーナ氏の行動に対してスリランカ政界野党から「支持表明」が多数寄せられていて、現職・新人の一騎打ちの選挙になりそうです。
シリセーナ氏は野党勢力を糾合した「NDF(The New Democratic Front)」という政治組織から立候補するのだそうで、この政党のシンボルは「白鳥」だとのことです。これに対して現職のラジャパクサ大統領の政権母体は「UPFA(The United People's Freedom Alliance)」で政党シンボルは「青いベテル葉(噛みタバコ)」です。
ラジャパクサ大統領は2005年11月に大統領に就任して憲法を改正して大統領への権力集中を図りました。親族を政権内の要職に付けて、自らは「国防大臣・財務大臣・港湾航空大臣・ハイウェー大臣」を兼務し国の予算配分の関して非常に大きな権限を持つことになっています。集中した権力と強い指導力を発揮して2009年5月には20年以上続いたタミール反政府組織との内戦を武力で解決しました。近代的な軍事力で容赦なく空爆を行ってゲリラ組織の橋頭保一つ一つ殲滅していった結果でした。この民族紛争解決は大統領の人気を一気に高める効果がありました。
しかしこの内戦武力解決と並行する形でラジャパクサ大統領の権力乱用・ファミリーへの利益誘導が行われました。大統領出身地のスリランカ南部「ハンバントタ」には国際航路用の港湾が整備され、スリランカ第二の国際空港が設置され、コロンボと南部を結ぶ鉄道・高速道路がいち早く整備されています。この南部への投資に比べると北部・東部の旧反政府組織支配地域の復興・開発は非常に遅れています。
こうした大統領の「暴政」にスリランカ国民は漸く声を上げることになったようです。シリセーナ候補は「大統領の行政権限廃止(大統領就任後6ヶ月以内に廃止)」を掲げています。かつて国会が選ぶ行政権を持つ首相と直接選挙で選ばれる大統領が「ねじれ」を起こすと政治は停滞しました。大統領の行政権限を廃止すると再びそうした政治的混乱発生の可能性が出てきますが、野党の多くそして国民の多くは権力の分散を望んでいるようです。国民の審判はどのように下るのでしょうか。
因みにラジャパクサ大統領が「財務大臣」を兼務しているので実質的に国の財政に責任を持っているのは財務次官の「ジャヤスンデラ氏」です。「ジャヤスンデラ氏」はスリランカ通信会社の政府持ち株代表を兼ねていたので、スリランカに赴任しているとき、及びその後も何回かお会いしたことがあります。もの静かで非常に誠実で大変優れた方でした。
既に20年近くも財務次官の職を続けているスリランカの強力な金庫番です。政権が変わってもずっと財務次官職を続けてきたということはどちらの陣営からも一目置かれていることを示しています。内戦終結を挟んでもスリランカが成長して徐々に豊かになってきたことについて「ジャヤスンデラ氏」の健全な財政運営を行って国政を支えてきたことが貢献していることは否定できません。「ジャヤスンデラ氏」が安心して財務次官職を別な人に引き継げることができるような政治環境ができることを期待しています。
12月01日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る