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Kenの日記
by Ken
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■ホロコースト・リメンブランス・デー
1月27日はイギリスの「ホロコーストを思い起こす記念日」でした。このメモリアルデーが制定されたのは2001年だそうで比較的新しい記念日です。また国連は2005年にアウシュビッツ強制収容所が解放されたこの1月27日を「ホロコースト犠牲者追悼デー」とすることを決めています。第二次世界大戦から50年以上経過した時代に制定されるところに、ヨーロッパにおけるホロコーストの傷の深さを感じざるを得ません。

ホロコーストに関する報道がインターネットのBBCNewsで豊富になされていました。その中のひとつに「チェロを弾けたので助かった女性のニュース」がありました。その女性の名は「Anita Lasker Wallfisch」。18歳の時に強制収容所に送還されました。入所時の検査の際に以前の職業を問われて「チェロを弾いていた」という回答によって命を救われたのだそうです。

彼女の以下のコメントは非常に重いものです。「強制収容所で双子の子供の人体実験をしていた医師は、私の弾くシューマンのトロイメライを大変気に入ってくれました。音楽を愛好する時には完全に普通の人間であるのに、同じ人間が非常に恐ろしい人体実験を平気で行えるということは理解することができなかった」。ナチスがワーグナーの音楽を大変好んで利用したことは有名ですが、文明(この場合は音楽)と残虐は全く普通に両立してしまうことは忘れがちです。

「平和を愛する(文明のひとつ)」からと言って「残虐性」が消滅するものではないと思います。人類の歴史において多分殆どの戦争は「平和を求める」ために開始されてきたと思います。「積極的平和主義」という言葉の裏にはそうした「こわさ」を感じてしまう人が多いと思います。

ドイツ国民は第二次世界大戦・ホロコーストを「ナチの仕業」ということで整理して客観視する一方で、その「ナチ」の暴走を許した自分達ドイツ人の責任は今後将来に渡って忘れないように戒めているようです。ですから現在でもナチスの真似をする若者は非難されているようです。

しかし、イギリス・ドイツの両国民が理解しているのは、ナチスは文明国ドイツから生まれたし、残虐なナチの指導者は職を離れた時には洗練された文化を理解していたということです。ホロコースト記念日を作るとか、アウシュビッツを世界遺産に指定するとか絶えず反省材料を近くにおいておかないと自分達も何をするか分からないという危惧を抱いているのだと思います。

そのように考える人達に対して、「積極的平和主義・靖国神社参拝・憲法改正志向」は危険に思われても仕方がないと思います。
01月28日(火)
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