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Kenの日記
by Ken
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■クラウディオ・アッバード死去
1月20日指揮者のクラウディオ・アッバードが亡くなりました。1933年生まれの80歳であったとのこと。ウィーンフィル・ベルリンフィル・スカラ座で指揮台に立ち、それらの栄光の座から降りても、名手を集めたルツェルン祝祭管弦楽団と若手中心のボローニャモーツアルト管弦楽団を指揮し相変わらずの活躍をしていたのですが突然の訃報でした。

私が最初にアッバードの名を知ったのは、ウィーンフィル・ベームの組み合わせが「最強」と持て囃されていた時代にウィーンフィルと一緒に来日していた頃です。ベームの指揮する公演からチケットは売れていきベームの日が買えないのでアバードでも良いかという雰囲気はありました。尤もベームの音楽より「整然として活きが良い」とアッバードを選ぶ人もいました。

アバードが楽団の最前線に立つことになるのは、ベーム・カラヤンの楽壇退出後です。二人の両極端の巨匠を失った後に楽壇のエースに選ばれたのがアッバードでした。カラヤン・ベームの時代が第二次世界大戦後、冷戦下で社会は緊張を孕むものの高度成長を実現した西側社会にあって、価値観の多様化・ソ連崩壊に端を発する複雑な時代に移行していく時代でもあったと思います。カラヤンを驚愕させた強靭な「ムラビンスキー・リヒテル」などの東側の音楽家は既に姿を消し、ライバルの出現しないアッバードの時代が続いたのでした。

しかしそんなアッバードですが私にとっては何回も繰り返して聞くタイプの音楽家ではありません。持っているCDと言えば「ポリーニとのブラームス協奏曲2番」と、最近モーツアルト管弦楽団を振った「モーツアルト後期交響曲集」程度です。

纏めて聞けば別の味わいがあるかもしれませんが、私の印象としては「どんな楽曲でも相当程度の完成度で聞かせてくれるけれども、その楽曲のベストを争うショートリストに入るかというとそうではない。非常にオーソドックスで常に相当レベルの演奏をしてくれる指揮者だと思いますが、どんな演奏になるか予想もつかないという破天荒なことは絶対無く、想定の範囲内の演奏をするタイプです。たぶんこの種の指揮者は晩年のベーム・カラヤンの後を継ぐには最適な指揮者だったのだと思います。

アッバード時代の指揮者としてはアバドの他に以下のような指揮者が思い浮かびます。フルトヴェングラー・ワルター・ベーム・カラヤンの後にドイツ・オーストリア出身に指揮者が少なくなりました。そして、カンテルリ、ケルテス、テンシュテッドなど比較的若くして亡くなってしまった逸材がいます。さらにはハイティンク、プレビン、マゼール、クライバーなど「オーソドックス」タイプというよりは「少し変わった」指揮者もいます。結果論かもしれませんが、ウィーンもベルリンも「無難な」アッバードを選んだ理由が解る気がします。

ゲオルク・ショルティ:1912年〜1997年(享年85歳)ハンガリー
グイド・カンテルリ:1920年〜1956年(享年36歳)イタリア
ヘルベルト・ケーゲル:1920年〜1990年(享年70歳)東ドイツ
クラウス・テンシュテット:1926年〜1998年(享年72歳)東ドイツ
イシュトバン・ケルテス:1929年〜1973年(享年44歳)ハンガリー
ベルナルド・ハイティンク:1929年〜オランダ
アンドレ・プレビン:1929年〜ドイツ(その後フランス・アメリカ)
ロリン・マゼール:1930年〜フランス
カルロス・クライバー:1930年〜2004年(享年74)ドイツ
01月21日(火)
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