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Kenの日記
by Ken
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■上海「自由貿易地域」指定の影響
中国では経済改革の施策として上海市東部地域を「自由貿易地域」に指定し、税制だとか規制を撤廃した実験を始めようとしています。上海市の東には揚子江と東シナ海に接する広大な「浦東地区」が広がり、上海市はそこに産業を集積させようとしています。当初は28平方Km程度の広さですが。ゆくゆくは1200平方Km以上に拡大可能な地域なのです。

これに対して南の改革解放の先進地域であった広東と特別行政地域の香港地域おいては、一足先に深曙V市のチンハイ地区(15平方Km)が自由貿易地域に指定されていました。広東市・深曙V市・珠海市・マカオ・香港など珠江デルタ周辺の都市は連携を強め、更に「自由貿易地域」拡大を目指していたのですが、その指定は見送られたのでした。この地域全体の産業競争力は当然上海・北京を凌駕するのですが、その先進地域に大幅な自由を与えることができない現在の中国政府の思想的限界を示していると言えます。

1997年に中国に返還された香港(マカオも)は50年間それまでの制度を変えないと保障されています。北京・上海など中国の他の地域が現在程度の制度的な不便さが更に50年続くと想定すれば、香港(マカオ)の競争力・それに強く影響を受ける広東市・深曙V市の競争力は抜きん出ているし、マカオのカジノの魅力は多くの中国人富裕層を集めることになります。

ところが「人口が集中し・富が集積している上海」が香港のように「制度的自由」を得てしまったら今後の図式は大きく変化してしまいます。既に香港の制度を目当てにして香港に進出しようとしていた中国本土の資本が上海経済特区に流れているという状況がでているようです。

現在・香港とマカオ・珠海市を結ぶ海上高速道路の建設が始まっており、これが完成すれば香港・マカオ・珠海市の東西交通網が整備されて、「広州・深曙V」「マカオ・珠海」「香港」の逆デルタ交通網が出来上がります。東シナ海に面する広大広さの「横琴島」(マカオの隣)が整備されて「自由貿易地域」に指定されれば、そこに資本集積が進みマカオのカジノ産業もさらに拡大できることが期待されます。

しかし珠江デルタ地域への「自由貿易地域拡大」は見送られました。多分これは「香港の普通選挙導入の訴え」だとか、中国の他の地域では絶対に許されない中央政府批判などが原因しているのだと思います。香港始めとして北京から遠く離れた「珠江デルタ地域」では、成長著しい中国本土資本誘致のために政治的に「北京政府」に妥協するのか、「北京政府」が変化して香港・珠江デルタ地域の自由を認めていくのか、目の離せない状況が続きそうです。
10月01日(火)
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