ID:85567
Kenの日記
by Ken
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■尖閣棚上問題
中国を訪問中の野中広務元官房長官が、1972年9月の日中国交回復協議の際、当時の田中首相、周恩来首相の間で、尖閣列島の領有権について「双方が棚上げし、そのまま静かにやっていこう」という話をしたことを田中首相から聞かされていたことを明らかにしました。日本で言わずに中国主脳との会談の中でわざわざ発言するのも如何なものかと思いますが、故田中首相に身近に接した政治家ならではのエピソードなので物議をかもしそうです。

官房長官と外務大臣は「日本政府には棚上げに合意したという記録は残っていない」として直ぐに否定しました。確かに外務省には記録が残っていないようです。外務省が開示している1972年9月27日の公式記録には次にように書かれています。

(田中総理)尖閣諸島についてどう思うか?私のところにいろいろ言ってくる人がいる。
(周総理)尖閣諸島問題については、今回は話したくない。今これを話すのはよくない。石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ台湾も米国も問題にしない。
(田中総理)コメントなし。

この議事録から「日本側は合意していない」という解釈なのでしょうが、田中首相はわざわざ周首相の意向を聞いているのも事実で、領有権が日本にはっきり属していると確信しているのであれば、そもそもこのような問い掛けること自体がおかしいことになります。

この議事録から推定できるのは、中国側は領有権問題を棚上げしようと提案した。日本側はそれを黙認した。その結果として最大の懸案だった日中国交正常化がなされたということだと思います。田中首相がもし当時周恩来の提案を否定していたら(現在の政府が主張のように)、日中国交正常化にはもう少し時間が掛かっていたと思われます。

周・田中の当時の両国主脳が「棚上げ提案、黙認」という知恵で難しい交渉を乗り越えました。さすがに歴史に残る政治家の解決方法だと思われます。その時から40年以上経過した現在、新しく選出された両国のトップはどのような知恵が出すのでしょうか。
06月04日(火)
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