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Kenの日記
by Ken
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■久しぶりのドゥダメル
NHK−BSプレミアムで「グスターボ・ドゥダメル」指揮の2012年ベルリン・フィルヨーロッパ・コンサートが放送されました。ヨーロッパの名所を会場として行われるこのコンサートですが、今回はウィーンの「スペイン乗馬学校」が舞台となりました。土の乗馬場に床材を敷いて即席のコンサート会場としたようです。しかし天井から下がっているシャンデリアは豪華ですし、乗馬場の周りの観覧席も立派です。2012年5月1日の演奏会の模様です。

〈演奏会の曲目〉
「ハイドンの主題による変奏曲 作品56a」ブラームス作曲
「チェロ協奏曲第1番ハ長調 Hob.Zb−1」ハイドン作曲
「交響曲 第5番 ハ短調 作品67」ベートーベン作曲

(チェロ)ゴーティエ・カプソン
(管弦楽)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)グスターボ・ドゥダメル

非常に洒落た選曲だと思います。ウィーンに馴染みの作曲家の曲を並べたようですが、アンコールでモーツアルトをやって貰えれたら最高だったと思います。指揮のドゥダメルですが暫く見ない中に「太り」ました。顔が大分丸くなっています。太る体質なのかしら。

演奏は最初の「ハイドン変奏曲」からベルリンフィルがノリノリでドゥダメルとの相性の良さを感じさせます。管楽器全体をフルートトップのパユが引っ張っているような雰囲気です。パユは絶好調でした。弦楽器はひとりひとりが勝手にノリノリの感じがします。ドゥダメルの指揮は各変奏曲のリズムを大事に扱っているもので各変奏曲の特色を際立たせていました。

チェロ協奏曲では始めて聞いた「ゴーティエ・カプソン」の技術とその音色に圧倒されました。この「ゴーティエ君」はまだ31歳。3人兄弟の末っ子のようで一番上の姉がピアノ、長男がバイオリンをやっているのだそうです。長兄とのドュオは「イケメンコンビ」として有名らしい。名器のチェロは良く鳴るし、発音に雑音が殆ど混じらないので演奏全体が非常に上品な感じがします。身体はそれほど大きくないのですが、A線を弓の先まで弾くときの腕の長さがすごい。そのA線高音の音の素晴らしいこと。3楽章は猛スピードで走り抜けました。支えるオケもすごい腕なのですが、最後まで美しい音で破綻なく弾き切った腕はたいしたものだと思いました。深刻な音楽を静かに弾くときにどうなるのか聞いてみたいです。

彼は、ゲルギエフ、ハーディング、ヤルビ(P)、ミョンフンなどのまさしく現代を代表する指揮者と協奏曲を録音しています。ランランとかドゥダメルとか今日のカプソンとか元気が良くて、人柄も明るそうでこういう若者が活躍するのは頼もしいですね。

メインの「運命」も極上の演奏だったと思います。テンポはかなり速いのですが、フレーズ感がしっかりしているために速さを感じません。逆に心地よさに繋がっています。ベルリンフィル弦楽器群の高度な演奏能力にもよるのでしょうか、早いパッセージでも音が厚く音の粒が際立つのです。低弦には大変な個所がたくさんありますが、それを楽しむかのように演奏しているところが凄過ぎです。

全体の印象では「5番運命」と「リキむ」ことなく、「傑作9曲の交響曲の中のひとつの5番はこういう曲なんですよ」と言う感じで演奏しているように聞こえました。こういう演奏なら順番に全部聞いてみたくなります。ラトルとの組み合わせでも十分魅力的なのですが、ベルリンフィルとドゥダメルの組み合わせで、素晴らしい録音が期待できそうです。ぜひベートーベン交響曲全集を録音してほしいと思いました。
07月11日(水)
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