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Kenの日記
by Ken
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■映画「1911」
昨年2011年に公開された「1911」。映画館に行ってみるチャンスがなかったので、DVDを借りて見ました。

「1911」は中国の辛亥革命百周年を記念した映画で、総監督は「ジャッキー・チェン」。彼は映画の中で革命軍英雄の主役「黄興」も演じています。「孫文」役は「ウインストン・チャオ」。この人は2年前に公開された「孫文−100年先を見た男」でもやはり孫文を演じていました。少し逞しい身体つきですが雰囲気は写真でみる「孫文」とそっくり。孫文は「はまり役」だと思います。黄興の妻役として大変奇麗な中国の女優「リー・ピンピン」が最初から最後まで主役に付き添っていて、映画に清々しい潤いを与えています。

ストーリーは1911年3月29日(旧暦)の黄花崗起義から始まります。この戦いで命を落とした青年達の勇気、純粋さ、無念さが映画全体の基調となっています。その後1911年10月の武昌蜂起(辛亥革命)を経て、中華民国成立(1912年1月)の前後の話で物語の頂点を迎え、映画は袁世凱が大総統に就任する直前で終了します。中国国内で革命戦争の第一線で指揮をとる黄興と、海外で革命のための資金を集め、革命思想を練り上げる「孫文」が終に辛亥革命に成功するシーンは感動的です。

孫文と黄興の関係を中心に据えるとこの時期がベストでしょう。1911以降は袁世凱の野望、軍閥の割拠、日本軍の進出等で革命は泥沼化して孫文と黄興の関係も冷えて行ってしまうのですから。

写真でみてきた丸顔の「黄興」ですが、ジャッキー・チェンがだんだん似て見えてくるのは不思議です。ジャッキーが主役を張るだけに戦闘シーンの中で華麗な動きを見せていますが、本物の黄興がカンフーのような動きができたとは想像できませんね。

辛亥革命の100年後の現在を考えると、2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博によって中国の力が世界に示され、世界の工場・世界最大のマーケットとしていまや世界経済の牽引役となっていることが現実です。辛亥革命からの100年間は、「日本の侵略、国民党と共産党の戦い、中共の経済政策失敗に伴う経済停滞、文革」など非常な困難を経験しての現代中国です。しかし、孫文は100年前にそうした中国の繁栄が頭の中に見えていたのでした。日本、アメリカ、ヨーロッパ(イギリスを含む)を良く知っている孫文は、鉄道、道路、通信、電力などのインフラを整備し、産業を興し、優れた国の統治制度を確立した時に中国がどのような国になるのか想像することができたのでした。それは現在ほぼ実現しているといって良いでしょう。(孫文が強調した共和制という部分はまだ実現していませんが)

この孫文の外遊成果に対して、明治初期の日本の「岩倉使節団」は世界を回って何をみてきたのでしょうか。元々革命思想がなかったと言ってしまえばそれまでですが、大日本帝国政府がその成果として採った国の建設方策は帝国主義、アジアへの軍事的進出であり、第二次世界大戦、そして悲惨な敗北に向かって突き進んだものでした。

宮崎滔天は「孫文」の人物を知って、日本においても思い浮かべることが困難な程の大人物であると評価しています。日本でいえば誰になるのでしょうか。「西郷隆盛」でしょうか。
07月10日(火)
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