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Kenの日記
by Ken
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■カラヤンのベル・レク(スカラ座)
NHKBSプレミアムで放送されたカラヤン指揮のヴェルディのレクイエムを聞きました。演奏者は以下の通り。
「レクイエム(死者のためのミサ曲)」ヴェルデイ作曲
(ソプラノ)レオンタイン・プライス
(メゾ・ソプラノ)フィオレンツァ・コッソット
(テノール)ルチアーノ・パヴァロッティ
(バス)ニコライ・ギャウロフ
(合唱)ミラノ・スカラ座合唱団
(管弦楽)ミラノ・スカラ座管弦楽団
(指揮)ヘルベルト・フォン・カラヤン
イタリア ミラノ・スカラ座で収録 (収録:1967年1月)
この演奏のエピソードとして以下の話が伝えられているようです。
「1967年1月16日と17日に特別公演はトスカニーニの没後10年を記念するものだったためスカラ座は映画用の照明の使用を禁止した。そこでカラヤンはホールが使われない1月14日と15日のわずか2日間で撮影を終了させなくてはならず、予定していたベルゴンツィは都合をつけることができなかった。そこでまったく無名のテノールが起用された。彼の名はルチアーノ・パヴァロッティ。それは素晴らしいものだった。」
豪華なソリスト達です。プライス、コッソット、ギャウロフに負けることなくまだ若いパバロッティが美声を聞かせてくれています。プライスのソプラノは確かに低音から高温まで均一で馬力十分な声なのですが、他の3人とは少し異質な感じがしました。「イタリアの声」ではないのです。ギャウロフもイタリア人ではないですが、こちらはどういう組み合わせでもキチンと合わせられる「しなやかさ」を持っている声だと思いました。ギャウロフはフレーニと結婚してフレーニの故郷のモデナに住んだといいますからイタリアが合っていたのかもしれません。
「ヴェルディ」のレクイエムですから、スカラ座でイタリア人ソリストがぴったりくるのだと思いました。合唱団もすごいですが、スカラ座フィルの上手なこと。弦楽器も管楽器・打楽器も統率のとれた(カラヤンに統率されてというより自分達で音楽を作っている感じです)非常に高度な芸術性を感じさせます。
今回1967年のとんでもない名演奏の存在を知ったのですが、これだけの演奏を可能としたのは当時の社会情勢であったのではないかという気がします。それは「東西冷戦の本格化」ということです。1964年にフルシチョフが追放されてブレジネフ時代に入り、1968年には「プラハの春」がブレジネフによって潰されました。60年代はムラビンスキー&レニングラードフィル、リヒテル等が西側に知られるようになり、東側の驚異的な音楽水準が西側の音楽家達の競争心に火をつけたのでした。特にカラヤンは西側の音楽家の伝統を一身に背負って華々しい活動を繰り広げていましたから、とにかく名演奏を歴史に残したいと考えていたと思います。
この演奏が「映像」を残すことを目的であったので、演奏者の表情や演奏姿勢に少し硬いところがあります。それが音楽と妙に符号していて凄まじさを増しています。カラヤンの動きが少し大げさなのは仕方ないですね。
05月23日(水)
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