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Kenの日記
by Ken
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■ベルリンフィル演奏会模様
NHKの衛星放送で録画しておいた「ベルリン・フィル ヨーロッパ・コンサート 2007」を聞きました。
曲目は
1.舞台神聖祭典劇「パルシファル」 前奏曲(ワーグナー)
2. バイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調(ブラームス)
3.交響曲 第4番 ホ短調 (ブラームス)
バイオリン : リサ・バティアシヴィリ
チェロ : トルルス・モルク
指 揮 : サイモン・ラトル
2007年5月1日、ベルリンのオーバーシュプレー・ケーブル工場 で録音
昨年5月の収録です。場所が広いケーブル工場で少し寒々とした会場。5月のベルリンはまだ寒いのか観客には厚着の方が多いようです。最初のパルジファル前奏曲から非常に「密度の高い」、演奏者の意気込みが伝わる音楽です。「これは素晴らしい音楽会になるな」という予感がする第一曲でした。果たせるかな、ブラームスのドッペルコンチェルト、4番の交響曲も稀に見る名演でした。
ドッペルコンチェルトでは何と言ってもチェロの「モルク」の素晴らしさの圧倒されました。左手の正確さをなんと表現したら良いでしょう。大きな「クモ」のような4本の指が自在に指板の上を這い回るのです。高いところから素早く正確に弦をおさえるので、正確の音程の音の立ち上がりがはっきりしています。そして弓を扱う右手の強さ・長さは尋常ではありません。大きな身体をしていますから、もともと腕全体が長いのですが、その圧力が弦と弓の接点に集約されるのです。ここぞという時の音の力は凄いものがあります。
最初こそ少し遠慮がちであった「バティアシヴィリ」さんのヴァイオリンもモルクの熱演に触発されて後半はかなり力がこもっていました。モルクの「これならどう?こうしたらどう反応する?」と問いかけるような演奏は、ヴァイオリンとオケをぐいぐい引っ張っていたようです。これこそ「ラトル」の思う壺だったのでしょう。
メインはブラームス4番。本当に渋いプログラムです。1楽章の冒頭こそ少し遠慮がちなブラームスかなと思いましたが、さにあらず一つ一つの音全てに魂の入った稀にみる快演でした。一言で言うならば、全パート演奏者のレベルが非常に高いスーパーオケが、ラトルといっしょに音楽を奏でることを大きな喜びとして認め、自分達の音楽性を100%繰り出して演奏している素晴らしさ・・・とでも言うのでしょう。弦楽5部の分厚いフォルテ、しなやかな弱音に加え、名人揃いの管楽器軍はソロにテュッティに自在な音色を聞かせてくれます。オーボエ、フルート、クラリネット、ファゴット、ホルンのトップの素晴らしいこと。
今回の演奏を聞いて改めてベルリンフィルの素晴らしさを再認識しました。というのも、双璧のウィーンフィルとの対比で思うところがあるからです。ベルリンフィルはフルトヴェングラー、カラヤン、ラトルとしっかりした常任指揮者を据え、指揮者との密接な関係で音楽を作り上げていると思います。カラヤン音楽の好き嫌いはあるにしても、その時代を反映した最先端の音楽であったことは確かです。
一方ウィーンフィルは歌劇場管弦楽団有志ということもあって、一人の指揮者と密接な関係を持つというより、様々な指揮者といっしょに別な面の可能性を追求する一方、一旦歌劇場のオケピットに入ればウィーンオペラの音を醸し出す伝統をしっかり保持しているのです。ゲルギエフとの競演はその際たるものでロシアオケと間違えるようなロシア的な音を出してしまうのです。しかし安全運転の演奏は相変わらず「ムーティ」「メータ」であったりします。小沢とは心の底から納得してコンサートをしているのかどうか。若い「メスト」がどれくらいの才能があるか分かりませんが、ラトル・ベルリンフィルのような関係を築けるのかどうか興味があります。とにかくラトルはまだまだ若い世代です。これからの演奏には目を離せないかんじです。
09月27日(土)
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