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Kenの日記
by Ken
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■パーヴォ・ヤルビ/フランクフルト放送交響楽団演奏会
NHK教育テレビの芸術劇場でフランクフルト放送交響楽団演奏会を聴きました。演奏曲目などは以下のとおり。

ベートーベン作曲ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73「皇帝」
ブルックナー作曲交響曲第7番ホ長調ノバーク版
アンコール:ステーンハンマル カンタータ《歌》より間奏曲
ピアノ独奏:エレーヌ・グリモー
指揮:パーボ・ヤルビ
2008年6月3日、サントリーホールでの録音

全部をキチンと聴いた訳ではないのですが、非常に好感の持てる音楽が聴けて幸せな気分になりました。水曜日に同じサントリーホールで聞いた「ヴィルトゥオーゾ・オーケストラ」の演奏に落胆したばかりだったので、久し振りに「心に染み入る音楽」を聞いた感じです。

最初の「皇帝」は今話題のグリモーのソロ。彼女は演奏よりその容姿で注目されています。少し「硬い」感じで、力が完全に抜けていると言うわけではないですが、音楽をキチンと丁寧に弾いているところは好感が持てました。特に本人がそのことが分かっているようで弱音部では緊張を解すかのように深呼吸をしていることが分かります。これから場数を踏んでいくともっともっと力の抜けた演奏が可能ではないかと思いました。今後が非常に楽しみです。

ブルックナーでは「パーヴォ」の音楽を十分に楽しむことができました。第一楽章から非常にゆったりと始まりました。この交響曲では2楽章が全体の山場になる演奏が多いですが、パーヴォは1楽章も決しておろそかにせずにタップリと聞かせました。特に弦楽器の美しさが目立ちます。その美しさは2楽章においても全く変りませんでした。金管楽器の音のまろやかなこと。決して咆哮して弦楽器の音を消しません。特にトロンボーン・ワーグナーチューバの「押さえた演奏」は白眉だったと思います。こんな2楽章は珍しいです。

テレビカメラがやたらとソロをアップする画面構成が音楽を聞く邪魔をしていたと思います。2楽章のワーグナーチューバ、3楽章のトランペットは決して目立つ演奏ではありません。あくまでも全体の流れ、他の楽器の音とのバランスで聞いて欲しいというのがパーヴォの狙いだと思うのに、そこだけアップされます。確かにそういう演奏もありますが・・・。

パーヴォの作り上げるブルックナーは独特のものだと思います。番組最初のインタビューで彼は「神々しい音楽ではなく人間的な音楽」というようなことを言っていました。ブルックナーの交響曲を「神々しい」あるいは「人間を超えた」と言うように考える向きをありますが、パーヴォはもっと素直に、自然に演奏したのだと思います。それが非常に新鮮に聞こえたのではないでしょうか。同じことを別の人が考えてもこのような演奏になるとは限りません。パーヴォの人間的な魅力がオーケストラに伝わっているのだと思います。

アンコールはスェーデンの作曲家「ステンハンマル」の間奏曲が演奏されました。非常に美しく、パーヴォのステンハンマルに対する思いが現れた感動的な演奏でした。水曜日のヴィルトゥオーゾオーケストラのアンコールがスラブ舞曲・ハンガリー舞曲、それも騒がしい曲を2曲も演奏したことに比べると、そのセンスの良さが際立ちます。「パーヴォ」に目が離せないと言う感を強くしました。

世界の楽壇を担うであろう若手指揮者を概括して見した。自分と同じ世代・自分より若い世代が楽壇を引っ張る時代になりました。それぞれがユニークな個性を持っていて目が離せません。

ワレリー・ゲルギエフ(1952)、キーロフ、ロッテルダム、ロンドン
チョン・ミョンフン(1955)、ローマ(スカラ)、フランス国立放送
サイモン・ラトル(1955)、ベルリンフィル
ケント・ナガノ(1951)、モントリール
フランツ・ウエザー・メスト(1960)、クリーブランド、ウイーンフィル
クリスチャン・ティーレマン(1959)ミュンヘン、ドュッセルドルフ
パーヴォ・ヤルビ(1962)フランクフルト、パリ管
09月05日(金)
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