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Kenの日記
by Ken
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■ジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニー・オーケストラ演奏会
日本のプロオーケストラの首席演奏者等から構成されているジャパン・ヴィルトゥオーゾ・シンフォニー・オーケストラの演奏会に行ってきました。会場はサントリーホール。実は2日の演奏会を希望して当選していたのですが、急用が入ってしまい、主催のNTTデータの広報室にお願いして3日に変えて貰ったのでした。随分昔NTTデータに所属していたことがあったので、広報室の方は知る由もないのですが、気安くお願いしてしまいました。演奏曲目・指揮者・ソリストは以下の通り。
1.歌劇「リュスランとリュドミラ」序曲。
2.ベートーベン交響曲第7番
3.交響組曲「シェラザード」
(アンコール)
1.ドボルジャーク「スラブ舞曲第8番」
2.ブラームス「ハンガリー舞曲第5番」
指揮:ムーハイ・タイ(上海音楽大学教授)
コンサートマスター:ハーヴィー・スーザ
NTTデータ主催で抽選で当たった「無料」のコンサートだったのですが、正直言って少し「後味が悪い」のものでがっかりして帰ってきました。「ビルトゥオーゾ・オケ」は三枝成彰が提唱して組織されたもので、各プロオケの首席クラスの臨時編成オケ。確か最初の演奏会の曲目は「ローマの松」だったと思います。テレビで放送され、日本人オケとしてしっかりした(馬力の面)演奏だったことを記憶しています。始めから細かいニュアンスだとか、こなれた美しい音色は期待できませんが、指揮者がムードを盛り上げれば「名演」も可能だろうと考えて応募したのでした。
「サイトウ記念オケ」が一応「斎藤秀雄門下生+小沢の音楽に付いていく」というコンセプトがあるとすると、こちらは「とにかく首席クラスを並べる」というコンセプトだけで、どのような音楽を演奏するのかは指揮者次第であるといえます。
その指揮者(ムーハイ・タン師)の音楽は期待の正反対のものでした。これは技術の確かなオケから、ものすごいスピードでも音楽の輪郭が崩れないスリリングな音楽、あるいはここぞと言う時の管楽器・弦楽器の分厚い音を引き出すことを狙ったように思えます。細かくニュアンスだとか、弦楽器の艶のある和音だとか(例えばべト7の2楽章)を聴くことはできませんでした。
集められた演奏者からすると、代表して意見を言うべきコンサートマスターが外国から招聘されていて主催者側に文句が言える立場ではないし、指揮者は主催者側が選んだ人であるのですから、解釈に不満があっても黙って演奏するしかないですね。選ばれたという「名誉」とある程度の出演料をも貰っているのでしょうから。因みにコンサートマスターはインドのボンベイ出身の若手のバイオリニストでした。ひょっとするとボンベイ室内オケで「ジニー先生」の教え子かもしれません。
ムーハイ・タイさんは「決め」を重視する指揮手法に加え、過剰な「キュー出し」が気になり、どういう音楽をやりたいのかまったく見えてきません。とにかく「スピード」と「強弱(キメ)」だけを強調した音楽に聞こえてしまいます。日本とインドと中国が力を合わせても西洋音楽の分野では新参者という域をでない演奏になってしまいました。
三枝さんが日本楽壇の成長の真価を見せるために組織した「ヴィルトゥオーゾ」ですが、正しく現在の状況を表しているようでした。つまり現在のプロのオーケストラが非常に危険な状況を迎えているということ。音楽大学の増加、子供の頃からの訓練環境の大幅な進歩によって、技術的には非常に高いモノがあるけれど、演奏者自身が本当に音楽を楽しんでいるとは決して思えないのです。少なくとも今日のベートーベンの7番などは、演奏者側もつまらなかったと思います。
サッカーの全日本も頼りないし、オリンピック野球チームもしまりのない試合をしましたが、似たような組織の「ヴィルトゥオーゾ」も名演を聞かせることはできませんでした。
09月03日(水)
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