ID:81711
エキスパートモード
by 梶林(Kajilin)
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■泳ぎになってティーチャー
実家に帰った時、必ずと言っていいほど行くプールがある。
普通の地味な市営のプールなのだが、娘・R(10才)は
「あったかいプール(ジャグジーのこと)と暑いお部屋(サウナのこと)があるから好き」
で、息子・タク(8才)
「アイスの自動販売機があるから好き。帰りに買って!」
なんだそうだ。それぞれお気に入りのツボがあるようだ。今住んでいるところの近くにもいくつか区営のプールはあるけれども、この条件を揃えたところはないので、ふたりはどこよりもココに来たがるのだ。
プールが好きだからといって水泳を極めたいとかそういうスポ根のノリではなく、泳ぎたいように泳ぎ、じゃれ合い、遊ぶ。Rはクロールが苦手なので
「見てやるからクロール練習しようぜ」
せっかくなので鍛えようと思ったら
「やだ」
あっさり振られ、Rはすいすいと平泳ぎで泳いで行ってしまった。
このプールの利用層は多くがお年寄りで、三途の川を歩いているような感じで水中ウォーキングをしたり、煮干が浮いているような感じでゆったりと泳いでいる。あとは僕らのような子連れがたまに1組か2組来るぐらいで、肝心の若い女の子は絶対いない。なので水着ギャルのおっぱいに目を奪われ、プールから出られなくなる心配は、残念ながら無い。
そしてお年寄りはキッチリ運動するためとか、子連れは水泳を上達するためとか、皆まじめに取り組んでいる。特に目的もなくただ水遊びのノリで来ているのはウチだけではないだろうか。
だからRとタクが周りに迷惑になるのではないか、と思えるぐらいにふざけ始めることもある。ここは普通の25メートルのプールで、コースごとに右側通行で泳いでいかなければならない。暴れたりするのはもちろん禁止だ。
ふたりはわざと溺れているようなフリをして、水に浮かびながらガボガボと暴れている。
「やめなさい!何やってるんだ!」
ふたりをとっ捕まえてきちんと立たせたところ、
「あのねー、空のUFOから光が当たって、体が浮いてUFOの中までさらわれるところのモノマネ」
「矢追純一かよ!」
思わず笑ってしまったがきちんと叱らなければならぬ。
「ふざけてんのはお前らだけだぞ!まじめにやれ!分かったかR!」
「あ、おならしちゃったぷぷぷ」
「ちゃんと聞けよ!本当にUFOにさらいに来てもらうぞ!」
「やだー!」
そんなこんなで、なんとか真面目に水泳を終えたふたりは
「アイス買って!」
満面の笑みで自販機コーナーがあるロビーにすっ飛んで行った。
「はいはい、走るな走るな」
自販機コーナーあるのはセブンティーンアイスだ。ふたりともどれにするか真剣に悩んでいた。そのうちタクは隣のカップラーメンの自販機にも目移りして
「カップラーメンもいいかな…」
どちらにするか思いっきり迷っていた。UFOにさらわれるモノマネは余程体力を使うらしい。
結局はふたりともアイスを選び、ペロペロと舐めていた。いつかこの子達が大きくなって、
「よくプールでセブンティーンアイスをオヤジに買ってもらったなあ」
なんて思い出してくれる日は来るんだろうか、と無邪気な顔を見ながらそう思った。
アイスだけじゃなくプールにもセブンティーンぐらいの女の子がいればいいんだけどなあ…。セブンティぐらいの人はよくはいる…。
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04月05日(土)
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